農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成27年度 (第32集)

はじめに

2015年末にパリで開催された気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)は、世界の合意は困難との多くの予想に反して、2020年以降の温暖化対策の国際的枠組みとなる「パリ協定」を正式に採択し、成功裏に幕を閉じました。IPCCの温暖化シナリオの中でも人類が取りうる最大限の対策努力を取ることを世界が選択し、化石燃料に依存して発展してきた文明社会の在り方を、これから数十年という短い期間で化石燃料の終わりに向かって転換させるという、人類史上かつてない大きな決意を世界が行ったことを意味します。パリ協定が地球環境と人類の持続性のための歴史的な国際合意と評されるゆえんです。

農業は環境変動による影響を最も強く受けるとともに、環境にも大きな負荷を与えている分野です。農業と環境に関する問題がこうして重要性を増すなか、農業環境技術研究所は、平成23年度から27年度の第3期中期目標期間において、農業生産における気候変動の影響の顕在化や、農作物や環境のリスクに関する社会の関心の高まりを受け、1. 地球規模環境変動と農業活動の相互作用に関する研究、2. 農業生態系における生物多様性の変動機構及び生態機能の解明に関する研究、3. 農業生態系における化学物質の動態とリスク低減に関する研究、それに、4. 農業環境インベントリーの高度化の4つの大課題を重点研究課題として推進してきました。

本研究成果情報は、第3期中期目標期間(5年間)の最終年にあたる平成27年度における代表的な成果をご紹介するもので、「主要研究成果」と「主要成果」からなっています。このうち「主要研究成果」は、施策推進上の活用が期待される成果であり、行政部局を含む第三者の意見を踏まえて選定されます。本年度選定された「主要研究成果」は、「数理モデルに基づく水田からのメタン排出量算定方法の開発」、「気候変動がわが国のコメ生産に及ぼす影響の予測」、「環境保全型農業の取り組み効果を示す農業に有用な生物多様性指標」の3課題です。いずれも温暖化対策や環境保全型農業の推進等の施策に有用な課題と考えています。また主要成果は平成27年度の代表的な成果をご紹介するもので、合わせてこれらの知見や技術が広く利用されることを切に願うものです。

国立研究開発法人農業環境技術研究所は、平成28年4月に国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)、国立研究開発法人農業生物資源研究所、それに独立行政法人種苗管理センターと統合し、新たな農研機構として出発します。今まで「研究成果情報」は、ウェブ公開とともに出版物として配布を行ってきましたが、時間的な制約から今回はウェブ公開のみとさせていただきます。ご了承ください。

これまで農業環境技術研究所に対してみなさまがたにお寄せいただいた多くのご支援に対し感謝申し上げるとともに、今後は新たな農研機構として展開される農業環境研究に対してより一層のご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

 平成 28 年 3 月

国立研究開発法人 農業環境技術研究所
理事長 宮下 C貴

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