プレスリリース
平成17年7月1日
独立行政法人 農業環境技術研究所

カドミウムで汚染された水田の土壌洗浄法による修復

【要約】

カドミウムで汚染された水田土壌を塩化第二鉄溶液で洗浄し、カドミウムを除去する方法を開発しました。この方法は、低コストでカドミウムによって汚染された水田を現場で浄化・修復できる有望な技術です。

【背景・ねらい】

我が国には鉱山や製錬所等が原因となったカドミウム汚染水田があります。重金属の1種であるカドミウムは、その摂取量が多ければ人の健康に有害な作用を及ぼすので、食の安全を確保するためには、コメ等の農作物に含まれるカドミウム濃度を基準値以下とすることが必要です。汚染された水田からは基準値を超えるカドミウムを含むコメが生産されることがあるので、これまでは客土工事等によって汚染土壌の修復が行われてきました。しかし、コストが高い、客土に用いる未汚染土壌の確保が困難である等の理由で実施が難しくなっています。そこで、カドミウムで汚染された水田土壌を低コストで浄化する土壌洗浄法を開発しました。

【成果の内容・特徴】

1.洗浄剤として適した薬剤を選抜した結果、塩化第二鉄はカドミウムの抽出効率が高く、しかも安価な上、土壌への環境負荷が少ないことが分かりました(図1)。

2.水田を畦板で囲み漏水を防止した後、塩化第二鉄溶液を送液ポンプで施用して代掻きを行うことによって、カドミウムを水中に溶出させ、田面水を排水します(写真1)。その後、用水で繰り返し洗浄して残存カドミウム及び塩素を除去します。通常の施用量は塩化第二鉄として100 〜700 kg/10aです。

3.現場設置型の排水処理装置には、排水中のカドミウムを選択的に回収するためのキレート資材を内蔵しています(写真1)。処理後の排水中のカドミウム濃度は排水基準値(0.1mg/L)以下となります。回収したカドミウムは処理工場に搬入して再利用します。

4.洗浄処理によって、土壌のカドミウムは無洗浄区の50%程度まで大きく低下します(図2)。

5.洗浄処理後に栽培した水稲「あきたこまち」の収量減少などの悪影響はなく、玄米および稲わら中のカドミウム含量は大幅に低下しました(図3)。

6.本成績は礫質灰色低地土の水田におけるものであり、洗浄効果の持続性については検討中です。また、実用化のためには、浸透性の高い圃場における下層浸透による地下水汚染等について、さらに検討が必要です。

7.本成果は、農林水産省委託研究プロジェクト「農林水産生態系における有害化学物質の総合管理技術の開発(平成15-19年度)」の研究資金により得られたものです。また、研究担当者・牧野知之の文部科学省若手科学者賞の受賞対象となった業績です。

【用語解説】

客土:     汚染土壌の表土をとり除き、あるいは汚染土壌の上に、未汚染土壌を盛り土すること。

塩化第二鉄: 酸性の強い化学物質であるが、化合物を形成する鉄イオンと塩素イオンは環境中に普通に存在する物質であり、ヒトへの毒性は非常に低い。

キレート資材: 特定の金属元素イオンと選択的に結合する能力を有する化学資材。

礫質灰色低地土: 沖積地に分布し、礫を含む土壌の一種。主に水田として利用されている。

研究推進責任者(独)農業環境技術研究所 化学環境部長

農学博士 斎藤 雅典 TEL 029-838-8300

研究担当者   (独)農業環境技術研究所 重金属研究グループ 主任研究官

農学博士 牧野 知之 TEL 029-838-8314

共同研究者   太平洋セメント株式会社 中央研究所

工学博士 高野 博幸 TEL 043-498-3897

共同研究者   長野県総合試験場 環境保全部

     伊藤  正 TEL 026-246-2411

広報担当者   (独)農業環境技術研究所 企画調整部 情報資料課長

     長岡 進一 TEL 029-838-8190

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