農業環境技術研究所プレスリリース

プレスリリース
平成20年8月8日
独立行政法人 農業環境技術研究所

特定外来生物カワヒバリガイの利根川河口から120km上流までの生息を確認

独立行政法人農業環境技術研究所 (農環研) は、飼養・輸入等が規制されている特定外来生物カワヒバリガイが利根川の河口から約120km上流までの範囲と、小貝川・江戸川・牛久沼などの周辺河川・湖沼などの広い範囲に生息していることを明らかにしました。今回、江戸川の埼玉県と東京都に接した地点で新たに生息が確認されたため、現時点での生息確認地は関東地方で群馬・茨城・千葉・埼玉・東京の五都県となりました。

特定外来生物に指定されているカワヒバリガイは1990年代に西日本に侵入した中国原産の付着性二枚貝で、侵入地域では水生昆虫などの在来生物の生息地を圧迫したり、灌漑用水など利水施設の配管を詰まらせたりするなどの被害をもたらしています。関東地方では、2005年に群馬県鏑川流域と霞ヶ浦でその生息が確認されており、農業環境技術研究所は2007年にカワヒバリガイが霞ヶ浦湖岸の約半分に生息していること、その侵入時期が遅くとも2004年までさかのぼれることを プレスリリース において報告してきました。

鏑川と霞ヶ浦は、どちらも利根川水系に属しており、利根川水系に属する他の河川への本種の侵入・拡大が懸念されていましたが、これまで利根川そのものを対象とした調査は行われていませんでした。利根川水系はその水が生活用水や農業用水として多くの地域で利用されているため、本種が利水施設に侵入し、通水障害などの影響を及ぼすおそれがあります。

農環研では2007年から、利根川の河口から180kmまでの範囲とその周辺河川・湖沼・水路を対象にカワヒバリガイの分布調査を行い、その生息範囲を明らかにしてきました。本成果は利根川水系におけるカワヒバリガイの被害対策を行う際の基礎資料となります。

なお、本成果の一部は8月刊行予定の日本ベントス学会誌63巻にて詳細を報告する予定です。

研究推進責任者:(独)農業環境技術研究所

理事長  佐藤 洋平

研究担当者:(独)農業環境技術研究所 生物多様性研究領域

主任研究員  水産学博士 伊藤 健二

TEL 029-838-8252

広報担当者:(独)農業環境技術研究所 広報情報室 広報グループリーダー

福田 直美

TEL 029-838-8191
FAX 029-838-8191

電子メール kouhou@niaes.affrc.go.jp

[ 成果の内容の詳細 ]

1.2007年11月から2008年3月まで、利根川河口から上流180kmまでとその周辺河川・湖沼の水深1mより浅い場所を対象に、転石などの目視と水面下の護岸に対する手探りによってカワヒバリガイの生息調査を行ったところ、利根川の河口から116kmの地点までの範囲でカワヒバリガイの生息を確認しました (図1, )。カワヒバリガイは利根川河口堰の上流部分でもっとも密度が高く、護岸壁面から10分間の調査で1820個体のカワヒバリガイが採集されました。全体としては河口から約80kmの範囲に高密度に生息していることが示されました (図3)。

2.利根川周辺の河川・湖沼・水路などを調査したところ、小貝川や江戸川、手賀沼や牛久沼など数多くの地点で新たにカワヒバリガイの生息が確認されました。江戸川では利根川との分岐点から約28kmまでの範囲では採集されませんでしたが、その下流の千葉県と埼玉県・東京都が接した3地点から新たに採集され、東京都・埼玉県(埼玉県は対岸の千葉県側)への新たな侵入を確認しました。今回江戸川で確認されたカワヒバリガイの密度はまだ低く、侵入が始まってまだ間もないものと考えられます。しかし、江戸川は周辺の河川・水路への接続が多岐にわたるため、今後の分布拡大が懸念されます。

3.今回の調査の結果、これまで知られていなかった新たな生息地が利根川水系内で数多く見つかりました。また、利根川は全長が300kmを越え、利根川水系全体でカワヒバリガイが生息可能な地域は広範囲に及ぶことが予想されます。これら未調査の地域については、分布状況のより正確な把握のために更なる調査が必要となります。農業環境技術研究所では、利根川水系のより広い範囲を対象とした分布モニタリングを行うと共に、侵入地域における被害防止策のための調査・研究を引き続き行っていきます。

[ 参考資料 ]

図1 利根川水系におけるカワヒバリガイの分布状況(地図)

図1 利根川水系におけるカワヒバリガイの分布状況
調査は地点毎に調査員1人が10分間河岸や湖岸を探索することで行った。図中の丸は調査点を示し、採集個体数が多いほど赤塗りが多くなっている。青線は、2006年の調査で明らかになった霞ヶ浦湖岸のカワヒバリガイ生息域。

図2 利根川の護岸に群生するカワヒバリガイ(写真)

図2 利根川の護岸に群生するカワヒバリガイ

図3 利根川の河口からの距離とカワヒバリガイ採取個体数の関係(分布グラフ)

図3 利根川の河口からの距離とカワヒバリガイ採取個体数の関係
烏川は鏑川と利根川を結ぶ河川。

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