農業環境技術研究所環境化学トピックス(2005) > バイオレメディエーションとは?

バイオレメディエーションとは?

農薬などに由来する化学物質の中には、生態系を乱したり私たちの健康を脅かしたりする恐れのあるものがあります。こうした化学物質は壊れにくく、環境中で長期間残留しやすいことが大きな問題になります。しかし、自然界にはこうした分解されにくい化学物質をも分解してくれるような微生物が存在します。そのような微生物、「分解菌」をうまく利用して汚染された環境を修復することを「バイオレメディエーション(bio=生物,remediation=修復)」といいます。
分解菌による化学物質の分解(イメージ)
(イメージ)
化学物質を食べて無害な物質に変えてくれる分解菌。複数種の分解菌が協力して一つの化学物質を分解する場合もある。

研究紹介;ゴルフ場にまかれた除草剤を分解する

当研究部では、ゴルフ場で用いられる除草剤が環境中に拡散し長期間残留することを防ぐことを目的として、化学物質の吸着能をもち、かつ微生物のすみかとなる無数の小さな孔をもつ特殊な木炭と分解菌を組み合わせた効率的なバイオレメディエーション技術を開発しました。
1.木炭中の分解菌 分解細菌の電子顕微鏡写真
右図は、木炭の微細な穴の中に住み着いた分解細菌(赤丸で囲った部分)の電子顕微鏡写真です。我々は、化学物質の吸着能が高く、かつ分解菌が定着するのに適した小孔をもつ炭を作出しました。
分解菌の集積装置 2.分解菌の集積装置
除草剤(シマジン)を溶かした無機塩培養液を、土壌と木炭の混合物に繰り返し還流させます。これによって、シマジンを分解できる土壌由来の微生物を木炭の小孔中に集積させることができます。
3.ゴルフ場での現地試験 芝生の下層に分解菌を集積させた木炭を敷き詰めている様子
開発したバイオレメディエーション技術によるシマジンの分解除去効果を調べるために、ゴルフ場の一角に試験区を設けました。右の写真は、芝生の下層に分解菌を集積させた木炭を敷き詰めているところです。
4.現地試験の結果
浸透水中のシマジン濃度の経時変化と分解除去率
上図は、浸透水中のシマジン濃度の経時変化と分解除去率を示したグラフです。浸透水中のシマジン濃度は、木炭+分解菌の処理によって大幅に低下していることが分かります。
分解菌を集積させた木炭を埋設すると、ゴルフ場に散布された除草剤(シマジン)は、木炭に吸着されそこに棲む分解菌によって分解されます。この技術により、ゴルフ場下層土及び地下水、さらには近隣河川へのシマジンの流出を大幅に軽減することができます。
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