農業環境技術研究所環境化学トピックス(2005) > 農業における窒素と環境の関わり

農業における窒素と環境の関わり

自然界での窒素の循環
 ひとくちに窒素と言っても、地球上では実に様々な形態で存在しています。大気中の実に78%は窒素ガス(N2)です。また、アンモニア(NH3)、硝酸イオン(NO3-)、亜硝酸イオン(NO2-)などのような無機化合物として、また生命をかたちづくるために必要なタンパク質、アミノ酸やDNAなどの有機物を構成する元素の一つとして、土壌、水など地球上のあらゆる場所にさまざまな濃度で存在しています。これらの窒素は、微生物や植物などの生物や工業的な化学反応、自然界での化学的な反応などによって、ある形態から別の形態へと変化します。地球上に存在する窒素は、さまざまにその場所や形を変えながらぐるぐると循環しています。

農業を巡る窒素サイクル
窒素による環境破壊
 植物が十分生育するには窒素やリンなどの栄養分を与えてあげる必要があります。しかしながら、肥料や堆肥などをやりすぎると、作物が窒素やリンを吸収しきれずに土の中にこれらの成分が残ります。土の中に残った窒素は、土の中で硝酸イオン(NO3-)の形へ変わります。硝酸性窒素は水に溶けて容易に土から流れ出ます。地下水や河川などに流れ込むと、周辺の環境、ひいては地球の環境にも悪影響を引き起こします。
 乳児が、硝酸性窒素を多量に含む水を飲むと、ブルーベビー症候群と呼ばれる病気を発症することがあります。また河川や湖沼に窒素やリンが多量に流れ込むと、藻類などが繁茂する、いわゆる富栄養化現象が起こります。
 そのため、飲料水、井戸水、そして河川などの水の硝酸濃度は高くならないよう努力することとされています(地下水中の硝酸性窒素の濃度は、平成11年の「地下水の水質汚濁に係る環境基準」の改正により環境基準項目に格上げされ、環境基準の達成・維持に努めることとされました)。
 また、硝酸が生物・化学的変化を起こすと、温室効果ガスの一種である亜酸化窒素を発生します。

これからの取り組み
 窒素は農業にとって無くてはならないものですが、やりすぎてはいけません。肥料や堆肥の施用量の適正化が必要です。それでも畑や水田からどうしても窒素が流れ出てしまいます。そこで、窒素が土の中をどのように動いて、地下水や河川に流れてゆくのか、その動く道筋や量を正確に把握し予測することは、窒素による環境汚染を防止しするために必要です。また、窒素やリンを作物が無駄なく吸収できるような新しい肥料や堆肥の開発も必要です。