これからの応用
ネムリユスリカ、宇宙へ行く
学習教材として
鑑賞魚用の生餌
ネムリユスリカが宇宙旅行を経験したことをご存知でしょうか?ネムリユスリカの乾燥幼虫は、ロシア科学アカデミーとの共同研究の生物実験材料として、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在したことがあります。これは、宇宙船内環境に暴露することによってネムリユスリカがどのような影響を受けるか調査する目的で行われました。 2005年9月に乾燥幼虫を搭載したプログレス補給船は、カザフスタン共和国から打ち上げられました。ISSとドッキングし、乾燥幼虫は30日間宇宙船内に滞在しました。そして、ソユーズロケットにて、同年10月、地球に帰還しました。
宇宙に行ったユスリカ
そのユスリカサンプルは、約1週間後日本に運ばれ、当研究グループで観察を行いました。サンプル幼虫を水に戻すと、地上で保存していた幼虫と同様、無事に蘇生しました。その後幼虫は、順調に発育して、蛹、成虫へと成長しました。メス成虫はオス成虫との交尾後、産卵をし、その卵塊から孵化したF1幼虫は、順調に発育を続けています。このように、宇宙船内環境は、ネムリユスリカ乾燥幼虫には影響を与えないことがわかりました。

さらに2007年3月、ソユーズロケットにて再びISSに乾燥ネムリユスリカが運ばれました。今回は、オオムギ種子など様々な生物サンプルと共に金属カセットに収められ、宇宙船外暴露実験を行っています。暴露後、4ヶ月後、1年後、1年半後、にそれぞれひとつずつカセットが回収され、地球に帰還します。宇宙空間で、どのようなストレスをネムリユスリカが受けるのか、無事に蘇生するのか、などを調査する予定です。今、この時も、ネムリユスリカは宇宙を旅行しているのです。
 
子供たちの理科離れが言われている今日ですが、ネムリユスリカは、生命の不思議さ、また多様性を伝える生きた教材としてとても適しています。乾燥幼虫は、常温で保存でき、また1時間程度で蘇生できるので、学校の理科の授業、大学の講義等などで実演することも可能です。また、実体顕微鏡を用いれば、幼虫の詳細な観察も十分可能なサイズです。教材化にあたり、放射線で不妊化した幼虫を使用するので(実験により実証済みです。)、万が一野外に逃げ出した場合も生殖できないようになっています。学習教材としての実用化が待たれます。
鑑賞魚用の生餌
現在鑑賞魚用の餌として、乾燥アカムシなどが市販されています。しかし、保存に伴って脂質が酸化し品質が低下したり、魚種によっては生餌しか食べないものもいるという問題点があります。長期間、常温乾燥保存ができるネムリユスリカ幼虫は、品質があまり低下することなく、また短時間で蘇生させることによって生餌としても利用することができるので、餌として最適な材料だといえます。ただし大量増殖が難しく、現在システムを構築中です。