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ここに注目 - イネゲノムと未来 - 未来を切り拓くお米のチカラ - 新農業展開ゲノムプロジェクト

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ここに注目

イネの品種改良に新たな歴史を拓く、いもち病抵抗性遺伝子の発見
−おいしく、いもち病に強い品種を開発−

2009年10月13日

イネに長い期間効果のある、病気に強い性質を持たせることができれば、農薬に頼りきることなく、病気による被害を安定して避けることができます。いもち病はイネの病気のうちもっとも深刻な被害(毎年日本全国で数百億円規模)を与えます。陸稲(畑で育てるイネ)は、いもち病にかかりにくい性質を持っており、その効果は長期間持続しますが(この性質を以下、圃場抵抗性とします)、この優れた性質がどの遺伝子によるかはわかっていませんでした。

今回私たちは、陸稲がもつ圃場抵抗性を決めている最も重要な遺伝子pi21 を特定し、この遺伝子がこれまでの抵抗性遺伝子とはまったく異なる構造を持っており、その働きが水稲(田んぼで育てるイネ)とは異なることで、いもち病に強くなることを明らかにしました。また、通常の抵抗性遺伝子は特定のいもち病菌にしか効果がありませんが、pi21 はさまざまなタイプのいもち病菌にたいして同じように被害を抑えるという特徴を持っています(図1)。

遺伝子レベルでの品種改良

これまで、交配により陸稲のいもち病抵抗性を水稲に持たせようとする試みが80年以上にわたり行われてきましたが、いもち病には強くなるものの、ごはんの味が悪くなってしまうので、実用的な品種を作ることができませんでした。
今回の研究で私たちは、その原因が、pi21 遺伝子そのものにあるのではなく、陸稲型のpi21 遺伝子のすぐ近くに味を悪くする遺伝子があり、従来の品種改良では両方の遺伝子が同時に陸稲から水稲に取り込まれてしまうためであるということも明らかにしました(図2)。

陸稲のpi21遺伝子をもつイネでは様々な種類のいもち病菌による被害が大きく軽減される

そこで、ゲノム情報を利用した新しい品種改良法により、交配と選抜を繰り返し、6000以上の候補の中から、味を悪くしてしまう遺伝子を切り離して陸稲型のpi21 遺伝子だけを水稲にもたせ、いもち病に強く、味が良い品種「中部125号」を作出しました(写真)。

コシヒカリと中部125号の比較写真

今回の成果は、ゲノム情報を利用して農業上重要な性質に関わる遺伝子を発見しただけでなく、植物が病気に強くなる仕組みの解明にも貴重な情報を提供するものであります。また、イネゲノムの解析データから遺伝子の位置情報を利用して、長年にわたる品種改良上の問題を解決した初めての成功例であり、農家の手間を減らして安定した生産を可能にするイネの開発に貢献できると期待されます。

福岡 修一

福岡 修一 (ふくおか しゅういち)

神戸大学大学院農学研究科修士課程修了、筑波大学大学院博士課程農学研究科修了(社会人入学)。農業生物資源研究所・ジーンバンク研究員を経て、2005年より農業生物資源研究所・QTLゲノム育種研究センター主任研究員。

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