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公募課題

2010年5月14日更新

ソルガムの遺伝子単離と機能解明 (略称:ソルガム、SOR)

概要

本研究プロジェクトではソルガムをバイオマス作物として利用する際に重要な形質について、遺伝子の単離と機能解明を目的にします。具体的には糖分含量、稈長のコントロール、病害抵抗性、再生性、茎の汁性に注目し、それぞれの形質に関与する遺伝子(QTL)の単離・同定を目指します。同時にイネやソルガムのゲノム塩基配列情報も利用して、遺伝子マッピングのためのツールやライブラリー等の基盤の整備、新形質の発掘のために新規有用変異の同定を行います。

研究目的

ソルガムのバイオマス利用に重要な形質について遺伝子を単離し、機能解明を行います。
単離した遺伝子を導入して既存のソルガムの品種を高度化します。
さらに複数の有用遺伝子を集積させることによって、1) 高い生産性、 2) 粗放的栽培が可能、3) 周年栽培が可能などのソルガムの利点を活かした新たなバイオマス作物のデザインを目指します。

達成目標

以下の形質についてソルガムのバイオマス作物としての利用を促進するために、生育関連・耐病性関連・生産性関連等の8個以上の遺伝子(QTL)を、形質遺伝子の単離および機能解析を行うことが目標です。

  1. 低コスト・高効率栽培に資する形質として倒伏耐性(草丈の制御)、病害抵抗性 (紫斑点病抵抗性)に関する遺伝子を同定します。これにより収穫作業を効率化し、病害による収量の低下を防止し、薬剤の使用を低減することで低コスト栽培に貢献できます。
  2. 現在主要なバイオエタノール生産原料となっている糖についてその含量、利用率を増加させる形質として高糖性、乾汁性に関与する遺伝子を同定します。これによってソルガムのバイオ燃料への利用を促進します。
  3. 将来の利用が検討されているセルロースバイオマスの原材料としてのソルガム利用のために、乾物生産量の増大が重要です。このため多回刈りを可能とするソルガムの再生性に関与する遺伝子(QTL)を同定します。
    これらの研究によって単離された遺伝子は単独に利用されるだけではなく、要素技術として組み換え育種やDNAマーカーを利用したバイオマスソルガムのデザイン育種に利用されます。
  4. 新規な形質を有するバイオマスソルガムの育種を行うために、バイオマス作物育種に有用な変異を持つ多数の突然変異体を作出し、栽培し、データベース化します。これによって付加価値の高い品種や系統の作出や形質遺伝子の単離を効率化できます。

研究内容

節間伸長および高糖性に関与する遺伝子の解析

 ソルガムの機械による収穫の効率化及び耐倒伏性は、育種上重要であり、節間伸長を制御した短稈形質が利用されてきたが、その分子遺伝学的解析はあまり進んでいない。そこで、ソルガムの節間伸長を制御する遺伝子の同定を目的に、QTL解析等を行う。また、近年のバイオ燃料生産計画において、作物の糖分含量は最も重要な形質の一つである。そこで、ソルガムの糖分含量を制御する遺伝子のうちの一つの同定を目的として、雑種集団を用いたQTL解析、イネゲノム情報やソルガムの突然変異体を活用しつつ、原因遺伝子の同定とその機能の解明を目指す。

病害抵抗性に関与する遺伝子の解析(紫斑点病抵抗性)

 糸状菌病であるソルガムの紫斑点病は関東以南の温暖地で発生する代表的な斑点性病害で,近年その発生は拡大傾向にあり、発生頻度は高い。本研究ではイネゲノム情報を活用して紫斑点病抵抗性遺伝子の単離・同定を行う。

乾汁性に関与する遺伝子の解析

 ソルガムからバイオエタノールを生産するには、桿を搾汁しそこに含まれる糖を発酵させる方法が現段階では最も合理的であると考えられる。ソルガムの乾性および汁性が単一の遺伝子により決定される事が判明しており、 本研究では、研究期間内に乾汁性を決定する遺伝子を単離し、その機能を解析することにより、このような植物の茎の形質がどのようなメカニズムで形成されるのかを明らかにする。

再生性に関与するQTLの同定

 ソルガムはトウモロコシと比べ、乾物生産性や再生力は極めて高い。特に再生性はトウモロコシにはない重要な特性である。わが国で栽培・利用されるソルガム類のなかでは、スーダングラス(Sorghum sudanence (Piper) Stapf)が最も再生性に優れており、本課題では、再生性を発揮する遺伝的調節機構を明らかにすることを研究目的として、遺伝子作用の大きなQTLについて、準同質遺伝子系統の作出ならび高精度連鎖解析によるQTLの候補ゲノム領域の絞り込みを行い、最終的には候補遺伝子を特定する。また再生性の選抜のために、選抜マーカーを作出する。

有用突然変異体の誘起とその同定

 ソルガムは、これまで子実用、牧草用等の育種が行われてきたが、バイオマス作物としての育種、特にその放射線分子育種はほとんど行われていない。本研究課題では、バイオマス作物育種に有用な変異を持つ多数の突然変異体を系統化し、データベース化することで、バイオマス作物としてのソルガム分子育種の推進を図る。ガンマ線をソルガム種子に照射した種子を世代促進圃場で育成しM1およびM2世代の表現型の分離を調査する。バイオマス作物として有用な表現型を示す突然変異体について種子を採取し系統化するとともに表現型を記載したデータベースを構築する。

イネ科作物遺伝子解析のための基盤整備

 ソルガムのマップベースクローニングによる有用遺伝子単離を効率的に進める目的でゲノムワイドなSSRあるいはSNPマーカーの開発を行い、課題担当者の作出した交配集団を用いて遺伝子型を決定し、連鎖解析を進めるための必要な支援を行う。またゲノミックライブラリー(BAC)の構築および当該ゲノム領域のクローン化を行い、得られたクローン (100kb)の塩基配列を解読する。

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SOR概略図

実施課題一覧(平成22年度)

↓課題番号をクリックすると、各実施課題の研究成果を見ることができます

課題番号 実施課題名 課題責任者 所属機関
SOR0001 節間伸長および高糖性に関与する遺伝子の解析 名古屋大学
SOR0002 病害抵抗性に関与する遺伝子の解析(紫斑点病抵抗性) 農業生物資源研究所
SOR0003 乾汁性に関与する遺伝子の解析 東京大学
SOR0004 再生性に関与するQTLの同定 信州大学
SOR0005 有用突然変異体の誘起とその同定 名古屋大学
SOR0006 イネ科作物遺伝子解析のための基盤整備 農業生物資源研究所

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