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QⅡ-2 害虫抵抗性の遺伝子組換え農作物とはどのようなものですか?

 昆虫による食害は農業生産上の大きな問題です。収穫部分を直接食べられることによる収量・品質の低下だけでなく、茎を食べられることによる倒伏・枯死、 食害された部分からのカビや病原体の侵入といった問題が発生します。

 遺伝子組換え技術によって可能となった『害虫抵抗性』とは、特定の害虫の被害を受けない性質です。現在実用化されている害虫抵抗性農 作物には、土壌に生息しているバチルスチューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis )という細菌(Bt菌)が作る、ガやチョウなどのチョウ目、 またはコガネムシなどのコウチュウ目の昆虫に殺虫効果がある結晶タンパク質(Btタンパク質)の遺伝子を導入しています。

 最も広く栽培されている害虫抵抗性トウモロコシは、チョウ目害虫に抵抗性を持たせた遺伝子組換えトウモロコシ(Btトウモロコシ)で、 アワノメイガというトウモロコシの害虫に対して殺虫効果があります。アワノメイガの幼虫がBtタンパク質を食べると、この昆虫の消化管の中がアルカリ性のため、 Btタンパク質が消化管の中で殺虫効果を持つ形に活性化され、消化管に存在する『受容体』と呼ばれる部位と結合します。すると、消化管の細胞が破壊されてしまい、 アワノメイガは食べ物を消化することができなくなり、餓死してしまいます。

 このBtタンパク質は、30年間以上、生物農薬としても利用されてきた歴史もあり、有機農業でも使用が認められています。 また、遺伝子組換え植物体内のBtタンパク質の濃度は、生物農薬として散布される場合の濃度よりも格段に低いことが知られています。

 なお、Btタンパク質は種類によっては、チョウ目害虫に殺虫性を示すが他の昆虫には殺虫性を示さないなど、対象となる昆虫種の特異性が高く、ヒトや動物などにも影響は出ないことが知られています。