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QⅧ-18 『遺伝子組換えジャガイモがラットの免疫力を低下させた』という報道がありましたが、その事実関係を教えてください。

 イギリスのロウェット研究所に所属するアーパド・パズタイ博士が、『害虫抵抗性の可能性があるレクチン合成遺伝子を組み込んだジャガイモをラットに与えたところ、免疫力の低下と発育の阻害が認められた』とイギリスのテレビで発言しました(1998年8月10日)。 これを受けて、マスコミは、『遺伝子組換え農作物の害を初めて実証した』と、一斉に報道しました。さらに、パズタイ博士の共同研究者であるアバディーン大学のスタンリー・イーウェン博士が同様に、レクチン合成遺伝子を組み込んだジャガイモを10日間ラットに与えたところ、胃の内壁や小腸などに異常が見られたと発表しました。∗1

 しかしながら、パズタイ博士およびイーウェン博士の実験には、以下に示すように、多くの不備な点があると指摘されました。

実験動物の数(5匹ラットのみ)が少ない。従って影響の変動が一貫していない。
与えた飼料中のタンパク質量が少なく、栄養バランスに問題がある。
飼料の組成分析も実施していない。
比較対照実験が不十分。
使用されたマツユキソウのレクチンタンパク質は、もともとヒト白血球細胞に強く結合する報告があり、そもそも、 使用された遺伝子(レクチン合成遺伝子)から作られるタンパク質の安全性評価がなされていない。

 以上のことから、イギリスの新規食品・加工諮問委員会(ACNFP)は、『彼らの実験設計とデータからは、遺伝子組換えジャガイモで免疫力を低下させるという結論は引き出せない』(1999年)とし、 遺伝子組換えによる影響で免疫力が下がったとは科学的に結論できないとしました。∗2

参考; ∗1Richard Horton (1999) Lancet 354(9187);1314-1315,
   Stanley WB Ewen & Arpad Pusztai (1999) Lancet 354(9187);1353-1354
∗2ACNFP statement on the studies conducted at the Rowett Research Institute on potatoes genetically modified to produce the snowdrop (Galanthus nivalis) lectin(1999)(英国食品基準庁(FSA) 新規食品・加工諮問委員会(ACNFP)のサイトへ)