国立研究開発法人農業生物資源研究所 遺伝子組換え研究センター
遺伝子組換え研究推進室 |
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QⅧ-20 | 安全性未審査の遺伝子組換えトウモロコシ『スターリンク』の混入事件について、その事実関係を教えてください。 |
米国において、食品としては認可されていない遺伝子組換えトウモロコシ『スターリンク』(飼料としては認可済)が食品中に混入していることが確認され、食品会社のリコールにより、回収処分となりました。(米国2000年9月)
これを受けて、『スターリンク』の栽培認可は、開発会社から自主的に取り下げられる事態へと発展しました。
問題となった『スターリンク』は、アベンティス社(現バイエル・クロップサイエンス社)が開発した、Btタンパク質遺伝子(Cry9c)を含む害虫抵抗性トウモロコシ(Btコーン)です。
Btタンパク質は昆虫のチョウ目やコウチュウ目に対する生物農薬として、30年以上使用されてきたBt菌の活性成分であり、ほ乳類には安全とされてきました。また、Btタンパク質には種々あり、Cry1AbやCryAcなどのBtタンパク質遺伝子を組み込んだトウモロコシやダイズについては、食品として認可されています。
アベンティス社では、米国での認可を得るために安全性評価試験を実施しましたが、Cry9c遺伝子が産生するタンパク質が、pH2.0でのペプシン消化(胃での消化模擬試験)に対し4時間後も安定であり、90℃でも10分間安定という、熱による調理や胃での消化を経た後でも安定である可能性が示されました。
Cry9cタンパク質は既知のアレルギー性物質との構造的な類似性は認められず、アレルギーを誘発するという結果は得られていませんが、この実験結果からアレルギーを引き起こす可能性が残されるということで、米国では食品としての認可が得られませんでした。
一方、動物実験では毒性上の問題は認められず、飼料としては認可されました。
当時、日本では、飼料・食品のどちらにおいても、『スターリンク』の使用は認可されていませんでした(現在も未承認)が、同年10月に、市民団体から日本の食品からも検出されたとの指摘がなされました。