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第83回バイオeカフェ「葉緑体の役割は光合成だけではない!タンパク質の大量生産に植物を使おう」開催

 2014年6月11日、第83回バイオeカフェ「葉緑体の役割は光合成だけではない!タンパク質の大量生産に植物を使おう」というタイトルで、遺伝子組換え研究推進室・田部井豊 室長がお話をしました。

(お話の概要)
 植物と動物の細胞にはいくつか違う点がありますが、その1つに植物細胞には葉緑体があるという点です。そして、この葉緑体にもDNAがあり、光合成で使うタンパク質などの遺伝子が含まれています。通常、遺伝子組換え植物を作製する時は、細胞内にの核の染色体DNAの中に外来遺伝子をいれます。ところが、 葉緑体に遺伝子を入れて作成した葉緑体形質転換植物では、次のようなメリットがあります。
  ・導入した遺伝子が安定して働く(発現する)。
  ・核に入れた時よりも数十〜数百倍の遺伝子があるため、タンパク質をたくさん作ることができる。
  ・狙った部位に遺伝子を入れることができる。
  ・母性遺伝なので花粉飛散による遺伝子拡散が極めて起こりにくい。
 ただし、安定して形質転換体が作成できる植物がタバコ、レタスしかないこと、作れるタンパク質は分子修飾のないものに制限される、などのデメリットもあります。まず、私たちは遺伝子導入の実験系が確立されているタバコを物質生産工場として利用できないかという研究を進めています。

バイオeカフェの写真1 バイオeカフェの写真2
お話する田部井室長 準備した席は満席。各テーブル内でのテーブルトークも楽しみました。

 その研究成果の1つとして、葉緑体で殺虫性タンパク質を生産するタバコを開発、平成26年6月より野外栽培試験(遺伝子組換え作物の第一種使用)を開始しました。この殺虫性タンパク質は甲虫の仲間に効果があるもので、微生物などでは生産できなかったのですが、今回開発されたタバコではどのくらいのコストで生産ができるかなどを調査します。将来的には農薬の製造にタバコを利用できないかと考えています。

(テーブルトークの様子)
 筑波大学のバイオeカフェの特長は、参加者とスピーカーだけでなく、「テーブルトーク」という時間があり、同じテーブルに座った参加者同士の意見交換も楽しめる点です。田部井室長は冒頭、「遺伝子組換えに賛成ですか?反対ですか?」という質問を参加者に投げかけました。当日の参加者のみなさんは意外と反対する人は少なかったのですが、医薬品製造には賛成だけど食品には反対など、単純に賛成・反対だけでは語れないという意見がでました。

 このほか、田部井室長からは遺伝子組換え農作物や食品について、私たちが普段どのくらい利用しているのか、世界での栽培状況などの情報提供もありました。テーブルトークでは、新しい技術のみならず、遺伝子組換え技術の利用について、幅広く議論ができました。