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サイエンスキャスティング2014が開催 高校生の研究体験を受け入れました

 2014年8月1・2日、つくば国際会議場主催の「サイエンスキャスティング2014」が開催されました。生物研では8月1日午後、遺伝子組換えカイコ研究開発ユニット・瀬筒秀樹ユニット長はじめユニットのメンバーが、中高生の研究体験を指導しました。
 「サイエンスキャスティング2014」はつくば国際会議場と株式会社JTBの主催で企画された中高生向けの研究体験で、つくば市内の研究機関が分担して全国の中高生を受け入れています。中高生は半日間の研究体験で学んだことをまとめ、プレゼンテーションを行います。生物研ではこれまでにも2つのラボで中高生を受け入れてきました。

 今年、遺伝子組換えカイコ研究ユニットでは、茨城県、埼玉県、東京都、岐阜県から中学生3名と高校生2名を受け入れ、「遺伝子組換え技術で光るカイコをつくる」というタイトルで、講義と実験を行いました。
 まず始めに、瀬筒ユニット長からの講義で、カイコの特徴や生物学への貢献、遺伝子組換えカイコの作製方法や応用などの話がありました。また、遺伝子組換えカイコを扱うことから、行う実験が遺伝子組換え実験となるため、注意事項なども説明がありました。
 実験は、遺伝子組換えタンパク質の溶出実験、カイコの卵へのDNAインジェクション、カイコ幼虫の解剖実験などでした。遺伝子組換えタンパク質の溶出実験では、遺伝子組換えにより繭糸に緑色蛍光タンパク質(GFP)を含む2種類の繭を抽出液に浸し、GFPが溶出する様子を、立松謙一郎主任研究員の指導により観察しました。この2種類の繭は、片方は繭糸のフィブロインに、もう片方はセリシンに、それぞれGFPを含むような遺伝子組換え繭です。用意した抽出液はセリシンを溶解するものでしたので、セリシンにGFPが含まれている繭からはGFPが溶解し、溶液が緑色に光りました。簡単な実験ですが、中高生らは繭糸の構造を良く理解している様子でした。

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参加者は全員、手洗いしてから実験室のある区画内に入ります。 最初に瀬筒ユニット長の講義を聞きました。
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立松主任研究員の説明を聞く中高生たち 左がフィブロイン、右がセリシンにGFPを含む繭を溶解した溶液。

 次に、内野恵郎主任研究員の指導で、カイコの卵へのDNA溶液(今回は体験なので実際には水を注入)のインジェクション(注射)する体験をしました。操作は専用の装置を用い、顕微鏡を覗きながら行います。まず、内野さんが直径約1.3mmのカイコの卵に針で穴を空け、その穴から注射針で溶液を注入する操作を実演します。卵の様子は装置に接続したモニターで見ることができますので、中高生は真剣にモニターを見ながら、内野さんの説明を聞き、自ら操作する際の参考にしていました。
 カイコ幼虫の解剖実験では、蛍光タンパク質を含む繭糸をつくる遺伝子組換えカイコを利用して行いました。解剖実験では坪田拓也任期付研究員によるデモンストレーションを見た後、ラボの実験補助員もティーチングアシスタントに加わり、中高生が各自解剖実験を行いました。解剖してみると、カイコの絹糸腺(糸の元を作る組織)で蛍光タンパク質が大量に作られているため、絹糸腺が白色光でも着色して見えました。蛍光顕微鏡で観察すると、その様子がさらにはっきりと観察できました。解剖するとき、最初にはハサミを入れることができなかった高校生も、指導にあたった坪田任期付研究員と一緒に実験をするうちに、最後には自分で解剖できるようになっていました。
 さらに、その後展示室に移動して、これまで100年以上続いているカイコ研究の歴史を学ぶとともに、蛍光タンパク質を繭糸のフィブロインに組み込んだシルクを用いてる繰られた、光るドレス等の観察を行いました。中高生たちは展示室の中を走り回りながら熱心に見学していました。  遺伝子組換えカイコについては一部では実用化も進んでいますが、中高生が遺伝子組換えカイコを使った実験を体験できる機会はほとんどありません。貴重な実験を体験したということもあり、参加した中高生は写真撮影も充分にして、次の日のつくば国際会議場でのプレゼンテーションに備えていました。

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インジェクション実験の内野主任研究員のデモンストレーションで卵の様子に見入る中高生 坪田任期付研究員が手際よく解剖する様子を、参考にしようと熱心に観察していました。
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真剣な表情で解剖実験をしていました。