平成24年5月2日(水曜日)〜5日(土曜日)にフランスのロスコフで、欧州分子生物学機構(EMBO)主催の ワークショップ「遺伝的安定性と変化:植物のゲノム維持のメカニズム」が開かれ、世界中から110名の研究者が参加しました。このワークショップは生物研も後援し、筆者も主催者の一人として運営に携わりました。
ロスコフは、パリから特急TGVで4時間、さらにバスに乗り換えて40分。ブリタニー地方にある、風光明美で静かな漁師町です。本ワークショップは、平成19年と22年に開かれたワークショップを引き継いで開催されたもので、今回は特に、積極的にゲノムの機能を変える研究、即ち、「新しい植物育種技術の開発」を主なテーマとして発表と討論が行われました。筆者は4つの発表分類の一つ、「技術と応用」の世話人を務めました。
植物の基礎研究の一つの大きな出口は、遺伝子組換え(GM)作物の開発です。しかし、日本同様ヨーロッパでも、GM作物は必ずしも市民権を得てきていません。本ワークショップでは、従来技術とGM技術の「架け橋」となるような新しい植物育種技術についても、いくつもの発表がなされました。このような技術が生まれてきたことは、植物研究の将来にとって非常に明るい材料であり、そのせいか会場での討論もとても活発でした。また、本ワークショップには民間企業からの参加者も多く、この分野では基礎研究を応用・実用化に繋げる産学官のトライアングルがうまく機能していることが窺えました。