生物研ニュースNo.49

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受賞・表彰

平成25年度 科学技術分野の

井澤 写真

表彰式にて

受賞タイトル:

光信号伝達系と概日時計による光周性花芽形成の分子機構研究

受賞者:上級研究員 井澤 毅

(植物科学研究領域 植物生産生理機能研究ユニット)

受賞日:4月16日

 作物の開花期は、収量や品質に大きな影響を与える重要な農業形質です。多くの植物は、日長を感知して開花期を調節する機能を持っています。この調節機能を「光周性」といい、1920年に発見されました。しかしながら、光周性による調整が起こる仕組みについては、本研究を始めた1990年代に至るまで、ほとんど未解明でした。私はイネを材料に、開花期の調節に関わる複数の重要な遺伝子を特定し、さらに遺伝子間のネットワークの概要を解明しました。その結果、日長(=光)の感知に関わる遺伝子群と、体内時計に関わる遺伝子群が相互作用して、光周性による調節が起こることを明らかにしました。

 光周性に関する研究が軌道に乗ったのは、平成9年(1997年)に、当時生物研に所属されていた奥野員敏さん(現 筑波大学)からse5という変異体を頂き、その解析を始めてからです。奥野さんから「もう少し問い合わせが遅かったら、この変異体系統を維持していなかったかも」と聞かされて、研究を進めるタイミングの重要性を実感しました。当時は現在のようにイネゲノムの情報が充実していなかったのですが、生理学の結果だけから原因遺伝子を絞り込むことができ、ラッキーでした。

 多くの原因遺伝子を同定することで、開花期の早いイネや遅いイネをDNAマーカー育種で作出できるようになりました。また本成果は、植物の光周性の解明を通じて、新しい作物の開発に大きく貢献できると考えています。その一例として、遺伝子組み換え技術を使い、任意の時期に人為的に開花を誘導できる作物の開発を試みています。                        

[井澤 毅]

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