昆虫科学研究領域

昆虫微生物機能研究ユニット


昆虫と微生物の相互作用と昆虫が植物病原ウィルスを媒介する仕組みの解明

 地球上でもっとも種類の多い動物である昆虫にはいろいろな微生物が感染していて、宿主昆虫や昆虫の寄主生物に様々な影響を及ぼします。
 昆虫微生物機能研究ユニットでは、微生物由来殺虫剤として利用されるBt毒素などに対する害虫抵抗性の機構を調べています。吸汁性昆虫は植物病原ウイルスを媒介することから、昆虫でのウイルス増殖を抑えるために必要な昆虫側の因子を探索しています。また、卵を通じて子どもに伝わる共生細菌は、宿主昆虫の性決定や生殖システムを巧妙に操作しており、この仕組みを解析して人為的に利用できるようになれば害虫の個体数を制御することも期待できます。
 このように、昆虫にかかわるウイルスを含む微生物の働きを解明し、それらの機能を利用して害虫被害を軽減したり、昆虫が媒介する農作物の病気を防ぐことを目指します。

トビイロウンカの唾液腺で増殖するウイルス

(a)イネの害虫トビイロウンカ
(b)唾液腺のウイルス増殖部位(橙色)
(c)唾液腺ウイルス増殖部位の電子顕微鏡観察像

昆虫ボックスウイルスに感染して白化・生育
不良となったドウガネブイブイ幼虫(左)
(右は健全幼虫)

共生細菌ボルバキア菌数の抑制による生殖器官の異常

キタキチョウではボルバキアがオスをメスに性転換し
ます。幼虫期に抗生物質で菌数を抑えると不完全転換
となり、卵巣と精巣を同時にもつ間性個体を生じます。
(a)正常オス、(b)正常メス、(c)間性個体