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プレスリリース
平成19年9月13日
独立行政法人 農業生物資源研究所
クミアイ化学工業株式会社

作物の遺伝子を思い通りにピンポイントで改変することに世界で初めて成功

- デザインどおりの品種改良が可能に -


  (独)農業生物資源研究所とクミアイ化学工業(株)は、イネが元々持っている遺伝子を意図した通りにピンポイントで改変することに成功し、これまでにない高度な除草剤耐性を示すイネを作出しました。このような改変方法で植物体の作出に成功した例は、作物で世界初となります。

  本研究では、イネの培養細胞から除草剤ビスピリバックNa塩(BS)に対して耐性を示す遺伝子(元の遺伝子上の2点が変異して生じた)を単離し、染色体上の元の遺伝子があった位置に、ジーンターゲッティングという方法でその耐性遺伝子を元の遺伝子と入れ替えるように導入し、BSに耐性を示すイネを66個体得ました。その約2/3の個体では、目的の遺伝子のみが導入され、染色体上の他の部分には変化が起きていないことが明らかとなりました。また、BS耐性の遺伝子をホモで持つ次世代のイネは、除草剤(BS)に対して強い耐性を示しました。

  ジーンターゲッティング手法によりイネの遺伝子を破壊することは、既に成功例がありましたが、本研究ではイネの遺伝子に望み通りの突然変異を導入することに成功し、ジーンターゲッティングの手法により、作物遺伝子をピンポイントで改良できることを示しました。このように、元の遺伝子を改良型の遺伝子に完全に置き換える事は、従来の形質転換技術ではできませんでしたが、ジーンターゲッティング手法によって可能になりました。今後、ジーンターゲッティングの効率を向上させること等により、デザインどおりの品種改良が可能になると期待されます。

  この研究は、農林水産省委託プロジェクト研究「有用遺伝子活用のための植物(イネ)・動物ゲノム研究」の「組換え体を用いた有用遺伝子の大規模機能解明と関連技術の開発」で実施されたもので、成果の概要は The Plant Journal に掲載の予定で、これに先立ち2007年8月9日にオンライン版で公表されました。


Masaki Endo, Keishi Osakabe, Kazuko Ono, Hirokazu Handa, Tsutomu Shimizu, Seiichi Toki
Molecular breeding of a novel herbicide-tolerant rice via gene targeting
The Plant Journal (Online Early Articles). doi:10.1111/j.1365-313X.2007.03230.x

【用語説明】:ジーンターゲッティング:
生物は、遺伝子の暗号文(DNAの塩基配列)の相同性(部分的な同一性)を利用して、遺伝子を組換えるシステム(相同組換えシステム)を持っています。このシステムを利用し、核内の標的とする遺伝子を細胞外から導入した遺伝子と置き換える事をジーンターゲッティングと呼びます。

参考資料[PDFファイル:254Kバイト]
【問い合わせ先】
研究代表者:(独)農業生物資源研究所 理事長石毛 光雄
クミアイ化学工業(株) 代表取締役社長望月 信彦
研究推進責任者:(独)農業生物資源研究所 植物科学研究領域長 飯  哲夫
クミアイ化学工業(株) 代表取締役専務 研究開発本部長石原 英助
代表研究担当者:(独)農業生物資源研究所 遺伝子組換え技術研究ユニット長 土岐 精一
電話:029-838-8450、電子メール:stoki@affrc.go.jp
クミアイ化学工業(株) 取締役 研究開発部長永山 孝三
研究担当者:(独)農業生物資源研究所 遺伝子組換え技術研究ユニット
日本学術振興会特別研究員 遠藤 真咲
クミアイ化学工業(株) 生物科学研究所
バイオテクノロジー研究室長 清水  力
広報担当者:(独)農業生物資源研究所 広報室長新野 孝男
電話:029-838-8469

【掲載新聞】9月19日(水):日刊工業新聞、9月14日(金):日経産業新聞、東京新聞、化学工業日報、日本農業新聞、産経新聞、フジサンケイビジネスアイ、茨城新聞、常陽新聞、9月13日(木):毎日新聞(夕刊(東京版))


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