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プレスリリース、参考資料(1.目的、2.用いた組換えカイコの系統、3.組換えカイコの飼育、
4.繰糸、図1、図2図3、図45.試作品(一部)、6.今後の展開、図5図6、図7

参考資料
世界初、遺伝子組換えカイコによる高機能繊維の開発
[アグリバイオ実用化・産業化研究成果]
1.目的

カイコは飼育法が確立されており、大量に飼育でき、純度の高い絹タンパクを大量に生産できます。そのため、遺伝子組換えを利用して有用物質等を生産する「昆虫工場」の代表的な存在になっています。今回の研究の目的は遺伝子組換えカイコを用いて、今までにない高機能を有するシルク繊維を開発することです。

2.用いた組換えカイコの系統

(1) 緑色、赤色及びオレンジの蛍光タンパク質を発現する組換えカイコ系統
  最初に、緑色や赤色及びオレンジ色の蛍光タンパク質の遺伝子を導入した組換えカイコを作出しました。これらのカイコは実験系統で、繭が小さいなど実用的な形質が劣っていたため、農家などで飼育されている実用品種との交配と個体選抜を繰り返し、形質の改良を行いました。これにより、実用品種と比べて遜色のない日本種と中国種1)系統を作成しました。次いで、育成された日本種と中国種の組換えカイコ系統の交配によってF1交雑種を作成しました。このF1のカイコを用いることにより、大量飼育を比較的容易に行うことができ、さらに、繭の形質が大幅に改善され、蛍光タンパク質を繭糸中に高頻度に発現するようになりました。
  1)日本種と中国種:日本のカイコ品種は生産性を高めるために雑種強勢が最も強く表れる雑種第一代を通常の飼育に使っている。雑種強勢は系統間の関係が遠いほど強くでるとされており、日本在来の品種及びこれらを元に改良した日本種と朝鮮を含む中国大陸に在来する品種及びこれから改良した中国種を通常交雑親として用いる。

(2) 極細繊度2)の繭糸を吐糸する組換えカイコ系統
  絹糸の太さに関与するシルクタンパク質のアミノ酸組成が変わるように設計した遺伝子を導入した組換えカイコを作出しました。このカイコの繭糸は極めて細いことから、繭の実用形質が低いのでそれを改善するために、この遺伝子を"はくぎん"(繊度が極めて細く、光沢、白度に優れた実用品種)に導入し、形質の改良を行いました。
  2)繊度:繊維の太さ、"はくぎん"は1.7デニール。

(3) 細胞接着性3)を有する組換えカイコ系統
  細胞接着性に関与するアミノ酸配列を改変した組換えカイコを作出しました。
  3)細胞接着性:動植物の細胞は、個々の細胞がバラバラに存在しているのではなく、細胞同士が接着している。培養細胞の増殖にはその接着に関与している基質の存在は欠かせない。細胞接着性を高めた絹糸とは、細胞の接着性を高めるための特殊な配列を導入した絹糸のことである。

3.組換えカイコの飼育

緑色、赤色及びオレンジ色蛍光タンパク質を発現するカイコ系統3種と極細繊度の繭糸を吐くカイコ系統1種の計4系統を飼育しました。飼育規模はそれぞれ2〜3万頭です(図1)


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