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プレスリリース
平成21年5月8日
独立行政法人 農業生物資源研究所

ウイルスが決まった植物種にしか感染しないしくみを発見


ポイント
  • タバコに感染するウイルスが、同じナス科のトマトに感染しないのは、トマトの持つタンパク質がウイルスのタンパク質に結合してウイルスの感染を阻害するためであることを発見
  • 新たなウイルス抵抗性作物の作出につながると期待

概要                                                                                             

農業生物資源研究所は、タバコの病害ウイルスであるタバコマイルドグリーンモザイクウイルス(TMGMV)が同じナス科のトマトに感染しない原因を解明しました。

ウイルスは、決まった植物種(宿主)にしか感染しませんが、その理由はわかっていませんでした。今回、トマトのtm-1というタンパク質が、TMGMVの複製に必要なタンパク質に結合し、その機能を阻害すること、そしてこの機能阻害がトマトにおいてTMGMVが増殖できない主要な原因となっていることを明らかにしました。さらに、トマトにはtm-1タンパク質による複製の阻害に加えて、TMGMVが植物体の中で増え拡がることを抑制する別の機構が存在することも示唆されました。複数のウイルス増殖抑制機構が同時に存在することは、ウイルスが容易には宿主生物種以外に感染できるように変異しないことをうまく説明します。

この成果により、「なぜウイルスは限られた範囲の宿主にしか感染しないのか?」という植物病理学およびウイルス学における重要な問題を解く手がかりを得ることができました。また、現在有効な抵抗性遺伝子が見つかっていない病害ウイルスについても、非宿主植物種を調べれば、新規抵抗性遺伝子を発見できる可能性が示唆されました。

この成果の概要は、2009年5月4日の週に米国科学アカデミー紀要のオンライン版で公開されます。


予算:生研センター「基礎研究推進事業」(2008年度〜現在)、日本学術振興会「特別研究員研究奨励費」(2007〜2008年度)、交付金プロジェクト「共生系の解明による生物制御基盤技術の開発」(2005〜2007年度)

参考資料 [PDFファイル:336キロバイト]

Kazuhiro Ishibashi, Satoshi Naito, Tetsuo Meshi, and Masayuki Ishikawa
An inhibitory interaction between viral and cellular proteins underlies the resistance of tomato to nonadapted tobamoviruses
PNAS published online before print May 7, 2009, doi:10.1073/pnas.0809105106
OPEN ACCESS ARTICLE
FACULTY OF 1000 BIOLOGY 本論文は、2009年5月13日「FACULTY OF 1000 BIOLOGY」に選ばれました。

問い合わせ先など                                                                            

研究代表者:(独)農業生物資源研究所 理事長石毛光雄
研究推進責任者:(独)農業生物資源研究所 植物科学領域長飯  哲夫
研究担当者:(独)農業生物資源研究所 植物・微生物間相互作用研究ユニット 
特別研究員 石橋和大
上級研究員 石川雅之
電話番号:029−838−7009、電子メール:ishika32@affrc.go.jp
広報担当者:(独)農業生物資源研究所 広報室長新野孝男
電話番号:029−838−8469


【掲載新聞】 5月13日水曜日:日経産業新聞、5月15日金曜日:朝日新聞、5月18日月曜日:化学工業日報、5月25日月曜日:常陽新聞、5月29日金曜日:科学新聞

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