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プレスリリース
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平成22年6月21日
独立行政法人 農業生物資源研究所
国立大学法人 東京工業大学

細胞を乾燥から保護する能力を持つタンパク質の機能を
低分子ペプチドで代替することに成功

- 細胞の常温乾燥保存の道を開く -


ポイント
  • 細胞を乾燥から保護する能力を持つタンパク質の機能を、低分子の人工のペプチドで代替することに成功しました。
  • トレハロースの細胞保護機能を人工のペプチドが強化することを証明しました。
  • 細胞の常温乾燥保存への応用が期待されます。

概要

1) (独)農業生物資源研究所と東京工業大学の研究グループは、細胞を乾燥から保護する能力を持つタンパク質の機能を、人工の低分子ペプチドで代替することに成功しました。
2)乾燥休眠中のネムリユスリカは、細胞保護機能をもつ糖であるトレハロースとLEAと呼ばれるタンパク質を蓄積しています。この2種類の分子は、細胞がガラス状態に変化し、極限乾燥状態に耐え得るために非常に重要な役割を果たすことが分かっています。トレハロースのガラス化による細胞保護の分子機構はよく知られていますが、LEAタンパク質の役割はよくわかっていませんでした。本研究では、LEAタンパク質が特徴的なアミノ酸の繰り返し配列を持つことを見出し、さらにそれを再現した人工的な低分子ペプチドが、ガラス化したトレハロースの安定性を向上させる機能をもつことを明らかにしました。
3)今後、LEAタンパク質が細胞を保護している分子機構の解明は、モデルペプチドを用いた様々な研究によって効率的に発展していくと考えられ、細胞の常温乾燥保存への道を開くものと期待されます。
4)この成果は、米国の国際雑誌であるBiochemistry 49巻6号(2009年12月)に掲載されました。さらに、全世界1500名以上の生物医学系研究者による評価システムである Faculty of 1000 Biology (2010年3月31日付)にも選ばれ、分野に関わらず必読の論文であるとの評価を得ました。
予算:生研センター「基礎研究推進事業」(2004〜2008年度)、科研費基盤B(2009年度〜現在)、
         科研費若手A(2009年度〜現在)
参考資料 [PDFファイル:315キロバイト]
Shimizu T, Kanamori Y, Furuki T, Kikawada T, Okuda T, Takahashi T, Mihara H, Sakurai M
Desiccation-Induced Structuralization and Glass Formation of Group 3 Late Embryogenesis Abundant Protein Model Peptides
Biochemistry, 2010, 49 (6):1093-1104 | DOI: 10.1021/bi901745f |
Publication Date (Web): December 22, 2009

問い合わせ先など

研究代表者:(独)農業生物資源研究所理事長石毛 光雄
研究推進責任者:(独)農業生物資源研究所 昆虫科学研究領域
        乾燥耐性研究ユニット長奥田  隆
研究推進責任者:国立大学法人 東京工業大学 教授櫻井  実
電話番号:045-924-5795、電子メール:msakurai@bio.titech.ac.jp
研究責任者:(独)農業生物資源研究所 昆虫科学研究領域
        乾燥耐性研究ユニット主任研究員 黄川田 隆洋
電話番号:029-838-6170、電子メール:kikawada@affrc.go.jp
研究担当者:国立大学法人 東京工業大学大学院博士課程(当時) 清水 天平
国立大学法人 東京工業大学特別研究員古木 隆生
(独)農業生物資源研究所 昆虫科学研究領域
        乾燥耐性研究ユニット特別研究員金森 保志
広報担当者:(独)農業生物資源研究所広報室長川崎 建次郎
電話番号:029-838-8469


【掲載新聞】 6月22日火曜日:日経産業新聞、化学工業日報、6月28日月曜日:日刊工業新聞、7月2日金曜日:科学新聞

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