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(独)農業生物資源研究所の省略形としては
「生物研」を使用願います。
生物研
解禁時間は2月25日午前5時(日本時間)
新聞は2月25日朝刊から
プレスリリース
平成26年2月24日
独立行政法人 農業生物資源研究所
富山県立大学
国立大学法人東京大学
国立大学法人筑波大学

アリの情報交換に関わる新型タンパク質を発見

- 害虫アリの防除薬開発の新たな標的として期待 -

ポイント
  • アリの情報伝達物質に特異的に結合し、輸送する新規タンパク質を発見しました。
  • このタンパク質を標的とすることで、害虫のアリ以外には作用しない、安全で環境に優しい農薬の開発につながると期待されます。

概要

  1. アリは女王フェロモンなど、分泌する化学物質によって情報伝達を行い、社会性と呼ばれる集団生活を維持してます。これら情報伝達物質はアリの重要なコミュニケーションツールですが、その物質や機能の全てが明らかにはなっていません。情報伝達物質は、アリの触角にある「輸送タンパク質」によって、嗅覚や味覚を司る神経細胞(化学感覚受容細胞)に輸送され、細胞膜の受容体タンパク質と結合します。これまでに分かっている輸送タンパク質は30種類程度で、500を超えると考えられている全ての情報伝達物質を輸送するには不足しているため、まだ明らかになっていない輸送タンパク質が多数あると考えられていました。
  2. 独立行政法人農業生物資源研究所(生物研)は、富山県立大学、東京大学、筑波大学と共同で、クロオオアリの働きアリの触角から、社会性の維持に必要な情報伝達物質を輸送する新たなタンパク質「アリNPC2」を発見しました。
  3. アリNPC2は、これまでに知られていた、数種類の情報伝達物質だけを運ぶ輸送タンパク質(OBPやCSP)とは異なり、オレイン酸などの脂肪酸、酢酸ヘキサデシル、酢酸オクタデシル、リノレイルアルコールなど幅広い種類の情報伝達物質と幅広く結合し、輸送することがわかりました。
  4. アリNPC2に似たタンパク質はヒトにもあります。ところが、ヒトNPC2はコレステロールを輸送し、脂肪酸とは結合しないのに対し、アリNPC2はコレステロールには結合しないなど、結合・輸送する物質が明確に異なっていました。
  5. 今回明らかにした立体構造をベースに、アリNPC2を標的とした薬剤を創出することにより、害虫アリには効果を示すが、ヒトや他の生物には悪影響を及ぼさない、環境に優しい薬剤の開発につながると期待されます。
  6. この成果は、2月24日(月曜日)午後3時(米国東部時間)以降に米国科学アカデミー紀要で発表される予定です。
予算 :JPSP科研費23580070(平成23-25年度)
プレスリリース全文 [PDF:429KB]
【発表論文】

Ishida Y, Tsuchiya W, Fujii T, Fujimoto Z, Miyazawa M, Ishibashi J, Matsuyama S, Ishikawa Y, Yamazaki T (2014) Niemann-Pick type C2 protein mediating chemical communication in the worker ant. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, DOI: 10.1073/pnas.1323928111

問い合わせ先など

研究代表者:(独)農業生物資源研究所 理事長 廣近 洋彦
研究推進責任者:(独)農業生物資源研究所 農業生物先端ゲノム研究センター
 生体分子研究ユニットユニット長 山崎 俊正
 電話:029-838-7900  E-mail:tyamazak@nias.affrc.go.jp
富山県立大学嘱託研究員 石田 裕幸
研究担当者:(独)農業生物資源研究所 農業生物先端ゲノム研究センター
 生体分子研究ユニット主任研究員 藤本 瑞
(独)農業生物資源研究所 農業生物先端ゲノム研究センター
 生体分子研究ユニット重点研究支援者 土屋 渉
(独)農業生物資源研究所 遺伝子組換え研究センター
 昆虫機能研究開発ユニットユニット長 宮澤 光博
(独)農業生物資源研究所 遺伝子組換え研究センター
 昆虫機能研究開発ユニット主任研究員 石橋 純
東京大学教授 石川 幸男
東京大学特任助教 藤井 毅
筑波大学講師 松山 茂
広報担当者:(独)農業生物資源研究所広報室長 井濃内 順
 電話:029-838-8469
本資料は文部科学記者会、科学記者会、筑波研究学園都市記者会、農政クラブ、農林記者会、農業技術クラブに配付しています。

【掲載新聞】  2月25日日本農業新聞、化学工業日報
2月28日日経産業新聞
3月15日産経新聞

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