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ウシの人工授精効率向上に貢献へ黄体の成長メカニズムを解明
< 業績 >
岡山大学大学院環境生命科学研究科動物生殖生理学分野の奥田潔教授、独立行政法人農業生物資源研究所動物生産生理機能ユニットの作本亮介主任研究員らの共同研究グループは、これまで黄体細胞の肥大に依存していると考えられてきた黄体の急激な成長には、黄体細胞の増殖も重要であることを世界で初めて明らかにしました。 黄体細胞の増殖が確認されたのは、活発な成長段階にある黄体のみであり、その後の黄体の成熟期においては増殖する黄体細胞は確認されていませんでした。また、成長期および成熟期の黄体細胞における細胞周期*1調節遺伝子発現を調べた結果、細胞周期の進行の促進に重要な役割を果たすタンパク質「サイクリン」*2が成長期に高い発現を示すこと、一方細胞周期の進行を阻害するタンパク質群「Cip/Kip ファミリー」*3の発現が成熟期に高い発現を示すことを明らかにしました。 < 見込まれる成果 >
現在の畜産現場では、牛の生産はほぼ100%が人工授精に依存しています。効果的なタイミングで人工授精を行うためには、プロスタグランジン (PG) 製剤などを用いて人為的に黄体を退行させ、排卵を誘起する必要がありますが、黄体の成長期にはPG製剤の効果が見られないことが長年大きな課題として残されてきました。 今回の成果は、黄体の成長期における黄体細胞の増殖と黄体形成過程のメカニズムを明らかにしたものであり、今後これらのメカニズムを詳細に調べることにより、成長期にある黄体機能を人為的に制御することが可能となり、人工授精効率の向上に大きく貢献することが期待されます(下図)。 < 補足 >
黄体は排卵後に形成され、妊娠の成立と維持に必須なホルモン(プロジェステロン)を合成・分泌する一過性の内分泌器官です。妊娠が不成立だった場合、黄体は消滅 (退行) し、次の排卵が回帰します。 効率的なウシの生産の為には、プロスタグランジン製剤を用いた人為的な黄体退行による発情回帰法が実施されています。しかし、現在使用されているプロスタグランジン製剤は排卵後 6 日以降の黄体にしか作用を示さず、それ以前の活発な黄体の成長期では黄体退行を誘導する方法が確立されていません。そのため、排卵後5日までの期間は黄体機能を制御できず、生産性低下の要因となっています。 < 用語説明 >
本研究は、農林水産省委託プロジェクト研究「ゲノム情報を活用した農畜産物の次世代生産基盤技術の開発プロジェクト」ならびに独立行政法人日本学術振興会(JSPS)科研費 (No. 24380155)の助成を受け実施しました。
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