国立大学法人筑波大学生命環境系の丹羽隆介准教授と大学院生の塩谷天、国立大学法人東京大学大学院新領域創成科学研究科の片岡宏誌教授、および独立行政法人農業生物資源研究所の篠田徹郎ユニット長らは、キイロショウジョウバエを主材料として、ステロイドホルモン生合成器官における細胞内コレステロールの挙動の調節に重要な役割を担う新規遺伝子を発見し、ショウジョウバエ胚の表現型を元に「noppera-bo(ノッペラボー)」と命名しました。
ステロイドホルモンは、生物種を問わず、個体の発育や恒常性の維持、さらには性的な成熟に重要な役割を担います。ステロイドホルモンは、生体中のコレステロールを出発材料にして生合成されますが、コレステロールがステロイドホルモン生合成器官の細胞にどのように取り込まれるのか、また細胞内でどのように適切に輸送されるのかについては、未だ不明な点が多く残されています。
本研究では、ノッペラボーの機能が失われるとステロイドホルモン生合成器官の細胞に異常なコレステロールの蓄積が生じることを明らかにしました。コレステロールは生体にとって広範な作用を持つ生理活性物質ですが、ノッペラボーはステロイドホルモン生合成器官におけるコレステロールの挙動調節にのみ作用する点で希有な機能を持ちます。今回の成果は、ヒトを含む高等動物を含めたコレステロール動態調節について新たな作用機序の知見を与えると共に、昆虫の発育を制御する新たな農薬の開発ターゲットとなることが期待されます。
本研究の成果は、2014年10月10日(英国時間)付でネイチャー出版グループの電子ジャーナルScientific Reportsで公開される予定です。。
* | 本研究は、科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業さきがけ「生体における動的恒常性維持・変容機構の解明と制御」(研究期間:平成24〜27年度)、日本学術振興会・科学研究費補助金・若手研究(A)(課題番号25712010、研究期間:平成25〜27年度)および基盤研究(A)(課題番号25252023、研究期間:平成25〜平成29年度)、文部科学省・科学研究費補助金・新学術領域研究「配偶子幹細胞制御機構」公募研究(課題番号23116701、研究期間:平成23〜24年度)の助成を得て実施されました。 |
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