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プレスリリース
平成14年4月26日
独立行政法人 農業生物資源研究所




イネゲノム(「日本晴」)の塩基配列データ、一元化される

〜 国際イネゲノム塩基配列解析プロジェクトによるシンジェンタ社の解読データの受け入れ 〜




  1. 国際イネゲノム塩基配列解析プロジェクト(IRGSP)参加機関である独立行政法人農業生物資源研究所とスイスに本社を置く大手農薬企業シンジェンタ社は、シンジェンタ社が解読したイネゲノム概要塩基配列データをIRGSPに無償で提供することで合意した。
  2. 本合意は、IRGSPの取り組みを高く評価し、これに協力したい、とのシンジェンタ社からの提案を受け、IRGSP参加機関でその是非を検討してきた結果、両者の間で成立したものである。
  3. イネゲノム塩基配列の解読については、我が国が先鞭をつけ、独立行政法人農業生物資源研究所が主導するIRGSPが中心となって進めてきたが、これまで、モンサント社、シンジェンタ社等による独自の取り組みもあった。
  4. 2年前のモンサント社に引き続き、今回、シンジェンタ社も解読データを提供することとなった訳であるが、これにより、イネゲノム(「日本晴」)の解読データは、IRGSPに完全に一元化されることとなる。
  5. シンジェンタ社の解読データについては、IRGSPによる解読データと比べ、精度が10分の1以下である等の問題があり、そのままでは遺伝子の機能解明等に使うことは無理であるが、IRGSPが活用すれば、世界が希求している高精度での完全解読作業が加速化する可能性がある。
[合意内容の趣旨]

 シンジェンタ社のトリーメサ研究所(TMRI)はミリアッドジェネティックス社と共同でホールゲノムショットガン法によりイネ概要配列を得た。イネゲノムの99%領域を99.8%の精度で解読したと推定しており、この結果は本年4月5日号のサイエンス誌に掲載された。また、シンジェンタ社は本年4月からイネゲノムの概要配列について契約により一般の研究者への提供を開始している。

 今回の合意に基づきシンジェンタ社は、1)結合整理したショットガン配列、2)結合整理に用いた配列ファイルデータ、3)結合整理配列の各染色体への配置情報、をIRGSP参加の2機関、農業生物資源研究所/STAFF研究所および米国ゲノム研究所(TIGR)に引き渡す。IRGSP参加機関は守秘義務のもとに、本情報を入手できる。シンジェンタ社の配列情報を用いて解析されたデータは、IRGSPの公開基準に合致した時点で公的データベースに公開される。

[合意成立の意義]

  1. 提供されるシンジェンタの塩基配列データを有効に活用することにより、参加国によって解析の遅れている染色体のゲノム配列解読が進展するものと期待される。当研究所(NIAS/STAFF)が担当している6本の染色体のうち、第9染色体についても早期の進展が期待される。
  2. IRGSPでは階層式ショットガン方式により99.99%の高精度の解析(フェーズ2)を進めており、本日現在全ゲノムの約74%の解読を終えている。IRGSPは本年12月末までの解読終了を公表している。シンジェンタの塩基配列データを有効に活用することにより、フェーズ2レベルの解読が加速されるとともに、フェーズ3レベルの完成版が早くできるものと期待される。
  3. コメは地球上の人口の約半数が主食料として利用している最重要穀類である。人口の増加、耕地面積の減少、水資源の枯渇、その他の持続的農業に必要な資源の減少等により、コメの生産性を高める技術の開発は益々重要な課題となっている。今回の合意によってイネゲノム塩基配列データが一元化されることにより、イネ遺伝子機能解明が促進され、世界における食料の安定的な生産に大きく貢献することが期待される。

アナウンスメント(英文)(和訳)
国際コンソーシアムの染色体解読状況(2002.5)、イネゲノム塩基配列解析累積
塩基配列の解析法

[問い合わせ先]
農業生物資源研究所 理事長 桂 直樹
研究責任者:農業生物資源研究所 理事 中島皐介
研究推進責任者:農業生物資源研究所 ゲノム研究グループ長 佐々木卓治
電話:0298-38-7066
農業生物資源研究所 分子遺伝研究グループ長 肥後健一
電話:0298-38-7011
研究担当者:農業生物資源研究所 ゲノム研究グループ 植物ゲノム研究チーム長 松本 隆
電話:0298-38-7411
広報担当者:農業生物資源研究所 企画調整部 広報普及課長 下川幸一
電話:0298-38-7004
















[掲載新聞]
2002/05/24:日本農業新聞、化学工業日報、毎日新聞、日本工業新聞、日刊工業新聞、日経産業新聞、日本経済新聞
2002/05/27:日本農業新聞
2002/05/29:日本農業新聞(総説)
2002/05/31:科学新聞
2002/06/07:全国農業新聞