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イネゲノム塩基配列完全解読について

1.内容

我が国は、世界に先駆けイネゲノム研究を開始し、遺伝地図、発現遺伝子地図、物理地図などゲノム塩基配列の精密解読に不可欠な基盤を整備しました。

これが求心力となり、平成9年9月にシンガポールで開催された第5回国際植物分子生物学会において、イネ品種「日本晴」を対象に選んで国際プロジェクトにより全塩基配列解読を行うことが合意されました。

この時に同時に我が国がこの国際プロジェクトの議長国を務めることも合意され、我が国をはじめとする各国が各国政府の予算措置のもとに、プロジェクトでの合意事項に従って、解読に必要な各種の素材を共有し、イネ12本の染色体を分担して、物理地図の完成と塩基配列の完全決定を目指してきました。

平成14年12月には高精度概要配列の解読を達成し、小泉首相により世界に向けてその宣言がなされました。この時点では、物理地図には43個の難解読部分が残っていました。

IRGSPではイネゲノムの完全解読を目指し、この後2年間をかけてこれらの物理地図上の隙間を埋め、イネゲノムの全塩基対量を3億9千万個と決定しました。また、残されていた43個の難解読部分も含め、現在の技術で解読可能な3億7千万塩基対を99.99%の精度で解読しました。

今回達成した成果は、最新の技術で到達できる最高のものといえます。例えていえば、平成14年12月の時点から2年間でディジタルカメラでの画素数が200万画素から500万画素以上になったと考えればよいでしょう。塩基配列情報の品質の向上は、それを利用して得られる広範囲にわたる新たな情報の信頼性を飛躍的に向上させます。

イネで予測された遺伝子の総数が約4万個とされ、また、それらのゲノム中での分布状況の特徴が明らかにされました。イネにおいては多くの、トランスポゾンと総称される領域が存在し、これらが遺伝子の推定存在箇所にも入り込んでいることや、進化の過程で染色体や遺伝子が重複を繰り返して来た結果などが解明されました。また、第4および第8染色体においては、セントロメアとよばれる、染色体の複製と分裂に重要な働きをする領域の塩基配列も初めて明らかにされました。

2.今後の展開

今回完全解読された正確な塩基配列情報は、基礎および応用両面における今後のイネ研究の方法を大きく転換させることになります。この転換の基盤となるのがイネゲノム情報科学の充実です。我が国では、イネの発現遺伝子情報についても膨大なデータを蓄積しています。これをゲノム塩基配列情報と融合させることで、正確に遺伝子の存在箇所を予測することが可能となります。

この情報により、従来から我が国において精力的に取り組んでいる、イネ遺伝子の機能を遺伝解析や遺伝子破壊法により解明する研究において、これまで以上に迅速かつ正確に目的とする遺伝子と形質の関係を明らかにすることができるようになります。

また、この情報によりイネのみならず、我が国の大学や民間の研究所において展開されている植物科学の広範囲な研究分野で、さらに優れた研究成果が生み出されることが期待されます。

育種利用においては、ここで得られた「日本晴」の正確な塩基配列を用いて、各品種が示す優れた性質に密接に関わるDNAマーカーの作製が可能となり、早期選抜の確実な手段が確立されます。また、塩基配列の違いと形質の違いの相関が明らかにされ、多数の品種や未利用資源の中から好ましい形質と対応する塩基配列が明らかにされることが期待されます。

この情報は病害虫抵抗性や耐冷性あるいは耐乾燥性イネ育種の早期目標の実現に貢献します。このようなイネ研究と並んで、コムギやトウモロコシなどの主要穀類のイネと類似する遺伝情報の理解にも、今回完全解読されたイネの全塩基配列が利用されます。

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