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昆虫微生物機能研究ユニット・陰山主任研究員が茗溪学園中学校生の個人研究の指導をしています。

平成25年12月より、つくば市にある茗溪学園中学校の加藤朱莉さんが、「ワラジムシ類と微生物に関する研究」という課題で、昆虫科学領域 昆虫微生物機能研究ユニットの陰山大輔さんの指導を受け、研究活動をしています。授業終了後、月に数回のペースで生物研 大わしキャンパスの実験室に通い、研究を進めています。

ダンゴムシ
加藤さんが採取したダンゴムシ。

みなさん、昆虫は好きですか?昆虫のことを良く知るには、昆虫と"共生"している微生物についても知る必要があります。

加藤さんは、ダンゴムシにとても興味があり、観察などを続けてきました。これまでに「青い」ダンゴムシを発見したことでテレビ番組などにも出演したことがあるほどです。ダンゴムシはイリドウイルスというウイルスに感染すると青くなることがわかっています。イリドウイルスには無脊椎動物全般に感染するウイルスの一種で、ダンゴムシにはダンゴムシにしか感染しないイリドウイルスが存在します(人間には感染しません)。フンなどを経由してイリドウイルスに感染したダンゴムシの体内ではウイルスが増殖し、結晶のように固まります。それに光が当たると青く見えるのです。ウイルスにとってダンゴムシを青くすることに何かメリットはあるのでしょうか。青くすることで外敵の目につきやすくし、鳥などに食べられやすくすることによって、自分が分散されやすくするというウイルスの利己的な戦略かもしれません。もしかしたらウイルス感染によってダンゴムシの行動も変わっているかもしれません。ところが青いダンゴムシの寿命は他のダンゴムシと比べると短いため、ウイルス感染したダンゴムシの詳細な行動などはわかっていません。そこで、今回の加藤さんはまず、イリドウイルスに感染した"青い"ダンゴムシを人為的に作成することから始めることにしました。そこで、ショウジョウバエの培養細胞内で増殖させたダンゴムシ用のイリドウイルスを感染させる実験を試みています。

年末、授業が終わった後に生物研のラボにやってきた加藤さんは、自宅の庭から1〜2ヶ月ほどかけて採取したダンゴムシ約40匹を用意していました。20匹にウイルスを接種、比較対象として20匹にただの緩衝液を接種し、その後のダンゴムシの様子を観察しました。外径が1mmほどの微細なガラス管を熱で引き延ばしたものを注射針として使い、ウイルスを含む溶液をダンゴムシの腹の柔らかい部分から、0.05μl(10万分の5ミリリットル)注入します。刺しすぎるとダンゴムシは死んでしまいますのでとても難しい作業ですが、陰山さんのお手本を見て、加藤さんは難なくこなしていきました。

ウイルス接種実験後、10日ほど経った時点では数匹のダンゴムシが死んでしまったものの、残りは元気に生きていました。しかし、この時点では青いダンゴムシは確認できませんでした。ウイルス接種し、死んでしまったダンゴムシにウイルスが感染して増殖したかどうか、確認する作業を行いました。

今後この実験がうまくいき、ウイルスに感染したダンゴムシが大量に作れるようになったら、それらを使って比較行動実験などをやっていく予定です。

現在は中学生・高校生でも単独で、あるいは研究者の指導を受けながら科学研究を進め、その成果を発表する機会が増えています。加藤さんも得られた成果の学会発表なども視野にいれて、陰山さんの指導の下、今後も研究を進める予定です。

陰山さんの実験操作を注意深く見ている加藤さん。
陰山さんの実験操作を注意深く見ている加藤さん。
実際にクリーンベンチを使って実験する加藤さん。
実際にクリーンベンチを使って実験する加藤さん。