セリシン蚕品種「セリシンホープ」


[要約]
  セリシン蚕品種の「セリシンホープ」を育成した。1頭当たりの吐糸量は約80mgであり、吐糸・営繭率は100%近い。繭層中のセリシン成分は98%を越えるので、効率的なセリシンの生産が期待される。
農業生物資源研究所・昆虫生産工学研究グループ・新蚕糸技術研究チーム

[連 絡 先]0263−32−0549
[分    類]農業生産、生物産業
[キーワード]セリシン、蚕品種、セリシンホープ


[背景・ねらい]
  セリシン蛋白質は抗酸化性などを有する機能性素材として注目され、皮膚ケアー剤や医療分野への用途が期待されている。普通の繭や生糸を精練して得る従来の回収方法では、アルカリや加熱処理でセリシンが変性する上、作業工程が繁雑で生産コストも高く、生産量には限界があるといわれている。一方、既存のセリシン蚕は2種存在するが、そのうち裸蛹Nd系統は吐糸・営繭割合が約60%と低く、1頭当たりセリシン分泌量も30mgと少ない。また、セリシン蚕Nd-s系統は分泌量が少ない上、セリシン純度が92%と低い欠点があり、既存系統は実用に耐えられなかった。そのため、セリシンを効率よく産生する蚕品種の育成が求められていた。

[成果の内容・特徴]
  1. セリシン蛋白質を分泌する蚕品種「セリシンホープ」を育成した。1頭当たり約80mgの繭糸を分泌し、吐糸・営繭率が99%に向上し、繭層の生産量はもとのNd系統に比べて4倍以上である。また、繭層練減率が98.5%とセリシン純度が高いので、きわめて効率よくセリシンを生産できる(表1)。
  2. セリシン分泌性は優性遺伝子(Nd)に支配されるので、普通の品種と交配してもセリシン蚕として発現する。強健性系統のKCS68とのハイブリッドは飼育が容易であり、セリシン分泌量が原種の場合より12%向上する(表1)。
  3. cDNAクローンを用いて品種固有のRFLPパターンを検出でき、遺伝子レベルで他品種と明確に区別できる(表2)。

表1

表2
[成果の活用上の留意点・波及効果・今後の展望等]
  1. 「セリシンホープ」のセリシン分泌性が優性遺伝子により支配されるので、他の普通品種と交配した「一代雑種」として利用できる。
  2. 純度が高く、変性しないセリシン蛋白質の大量生産が可能であり、再生医療品等の新しい分野に利用できるものと期待される。

[その他]

研究課題名    :特異な繭糸質を有する蚕品種の育成及び飼育技術の確立
予算区分      :交付金
中期計画課題コード:C411−2
研究期間      :01〜05年度
研究担当者    :山本俊雄、間瀬啓介、宮島たか子、飯塚哲也
発表論文等    :1)山本・間瀬・宮島・原(2001)特許出願公開2001-245550.  
            2)山本・宮島・間瀬・原・飯塚(2000)日蚕中部講要56.
            3)宮島・山本(2001)日蚕中部講要57.

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