イネ組織特異的・細胞内局在タンパク質の解析とデータベースの構築


[要約]
  ゲノム塩基配列情報を利用した生物機能解明のためにプロテオーム解析は重要である。イネのさまざまな生育時期の各種組織あるいは精製細胞内小器官のタンパク質5,676種類について構造解析し、イネプロテオームデータベースとして構築・公表した。

農業生物資源研究所・分子遺伝研究グループ・遺伝子応答研究チーム

[連 絡 先]029−838−7446 [分   類]知的貢献 [キーワード]イネ、プロテオーム、データベース、ゲノム機能解析


[背景・ねらい]
  近年、急速に進展したゲノム塩基配列情報を利用して、ゲノム機能解析研究は大きく前進している。しかし、生体内でダイナミックに変化しているタンパク質は、翻訳後に修飾を受けてから初めて機能を発揮する性格のものであり、タンパク質を総合的に解析するプロテオーム研究への組織的な取り組みが急がれてきた。イネの生育時期別の各種組織特異的タンパク質および細胞内小器官タンパク質を、二次元電気泳動像を基盤にして、網羅的・総括的に構造を解析した。

[成果の内容・特徴]
  1. イネのさまざまな生育時期の各種組織あるいは精製細胞内小器官から抽出したタンパク質を二次元電気泳動し、23種類の二次元電気泳動画像に基づいてそれぞれのタンパク質を精製し、気相プロティンシーケンサーあるいは質量分析計でアミノ酸配列を決定した。
  2. 二次元電気泳動マップ上で分離された13,129種類のタンパク質のうち、5,676種類について分子量・等電点・発現量等の情報、およびアミノ酸配列情報、さらにそれら相同検索結果情報等をカタログ化してイネプロテオームデータベースに収録した(図1)。
  3. このデータベースは、タンパク質名等のキーワードやアクセッション番号、等電点と分子量、アミノ酸配列を入力することによって、あるいは二次元電気泳動マップ上タンパク質のスポットをクリックすることによって検索することができる。さらに、公開されている各種データベース、イネ解析ツール等とリンクしている(図2)。
  4. イネプロテオームデータベースは、「http://gene64.dna.affrc.go.jp/RPD/」のサイトで公開している。

図1

図2
[成果の活用上の留意点・波及効果・今後の展望等]
  1. ゲノム研究とプロテオーム研究を連動させることにより、膨大なタンパク質情報を得ることができ、その生物機能情報とともにデータベース化することにより、ゲノム機能の解明を加速させることが可能となる。
  2. イネプロテオームデータベースには、遺伝子解析手法からだけでは解析できないタンパク質情報も集積されており、今後生物機能解明研究に大いに役立つツールになる。


[その他]

研究課題名    :イネマイクロアレイ・プロテオームデータベース構築および統合発現           データベースの整備,茎葉伸長等に関与する植物ホルモンに応答して           変化するタンパク質の網羅的解析と遺伝子単離・機能解明 予算区分     :シミュレーター,プロテオーム 中期計画課題コード:A121-2,A311-9 研究期間     :00〜04年度 研究担当者    :小松節子,小島恵一,鈴木宏史(日立ソフト),尾崎一男(インフォ           コム),肥後健一 発表論文等    :1)Komatsu S, Konishi H, Shen S, Yang G,(2003), Rice            proteomics: a step toward functional analysis of the rice            genome. Mol. Cell. Proteomics, 2(Review): 2-10.           2)Komatsu S, Kojima K, Suzuki K, Ozaki K, Higo K,(2004),            Rice Proteome Database based on two-dimensional polyacrylamide            gel electrophoresis: its status in 2003. Nucleic Acids            Research, 32 : D388-D392.

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