太繊度蚕品種「さきがけ」の利用
−古代絹をモチーフにした「福知山シルク」−

[背景・ねらい]
 京都府福知山市の広峰15号墳は古墳時代前期の前方後円墳で、ここから1986年の調査により盤龍鏡(図1C)が出土した。同時にこの盤龍鏡を包んでいたとみられる絹布が出土し、その絹糸は同時代の出土絹に比べ3〜4倍の断面積を有していた。そこで、現在の実用蚕品種の中で最も繭糸繊度が太い「さきがけ」(平成元年度品種指定)の特徴を活かすことにより、この古代絹をモチーフ とした織物素材を開発することとした。

[成果の内容・特徴]
@「
さきがけ」は極度の大巣品種であるため、自動接緒が円滑に行えないが、手引き・手接緒とし、低速で繰糸することにより、繭糸物性を保持するとともに、製品の差別化が可能になった。
A「さきがけ」の繊度むらについての対策としては、繰糸を180中(粒付け数で40〜45粒)で行い、太物生糸として利用することにより、影響を相対的に小さくすることができた。
B7%程度の先練りを行い、甘撚りの太物生糸の平絹を製織することにより、厚手の中に絹の柔らかさを持つ、新しい質感の織物素材が得られた。これを古代絹の出土地にちなんで「福知山シルク」(図1A、B)と命名した。この織物は経緯いずれも180中の太物生糸を使用しており、このため、通常の洋装用生地に比べ3倍程度の目付と、あたかも絹製の帆布かデニム地に近い質感と、絹の特徴を併せ持っている。

[成果の活用面・留意点]
@「
さきがけ」は既存の養蚕、製糸の技術の枠に囚われず、特徴有る蚕品種として育成された太繊度蚕品種である。このため、素材の特性を生かし、生糸や織物の差別化を図るためには、素材利用の目的と素材の特性を生かす技術の積上げが望ましい。
A試作した180中の生糸は極太で、伸度が小さく整経、製織には工夫が必要で、緯糸としての利用に向いている。
《野崎 稔・高澤弘明(グンゼ)・大槻房三(福知山市文化協会)・吉田主成・三國辰男・小瀬川英一・江口良橘・嶋崎 旭・永易健一》


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