蚕新品種「さきがけ」

最新技術情報シリーズ(国立編)1989

【研究のねらい】
 多様化する絹の消費ニーズに応えるためには、各種の新しい特性を有する絹の新素材の開発が必要である。蚕糸・昆虫農業技術研究所では、スーツ地やニット製品等の洋装用に適する太い原糸の開発を進めているが、それに向く太い繭糸を吐糸する蚕の品種を育成する。

【研究成果の概要】
1.研究成果、技術内容
(1)これまで、絹はほとんどが和装用であったために、太さが3デニール(直径約18μm)前後の繭糸を吐糸する蚕が主に育成されてきたが、この太さでは、コシやシャリ感の求められる服地用の絹原糸を製造するには不十分であり、4デニール以上の太い繭糸が求められていた。
(2)このため、繭糸の太さが4.5デニールで、収繭量や他の形質が普通の蚕品種と同等である特殊用途用新品種の育成を目指した。育種素材としては、繭糸を太くする方向で30数年にわたって選抜・改良した日本種及び遺伝資源として保存している太繊度の中国種をさらに改良したものをそれぞれ選出し、多くの交雑組合せの結果、目標に適合する特性を備えた四元交雑種の育成に成功した。
(3)本品質は、1988年春蚕期の農林水産省委託蚕品種性状調査において、一万頭当たり収繭量が25.5sと超多収で、繭糸の太さは4.3デニール内外であることが示された。また、5齢の発育は普通品種に比べて同程度か短めで、5齢1日当たりの繭糸生産効率は普通品種に比べて5%前後高い。生糸量歩合はやや低いものの収繭量が普通品種よりも15%以上多いので土地生産性は高い。
(4)これらの優れた特徴が農業資材審議会蚕種部会で認められ、平成元年3月23日付け農林水産省告示第388号をもって特殊用途用新蚕品種(日507号
×日508号)×(中507号×中508号)として指定され、愛称「さきがけ」と命名された。

2.期待される効果
 太い繭糸を必要とする伸縮、かさ高性に富む洋装用の絹短繊維素材「スパンロウシルク」の原料生産が可能となった。

3.普及指導上の留意点等
 本品種による太い繭糸の生産には、蚕幼虫が十分に生育することが必要である。そのため、桑葉育及び稚蚕人工飼料育でも稚蚕期に十分食下させて、壮蚕へ向けての体力作りに配慮が必要である。壮蚕期には良桑を飽食させて、飼育・上蔟温度は25℃前後とし、繭重2.6g以上、繭層重55Cg以上になるよう留意する必要がある。なお、本品種は普通品種に比べて催青日数が1〜2日長いので、掃立時に配慮しなければならない。熟蚕は大きく、重いため、条払いで蚕体を損傷しないよう、また、自然上族では這い上りが悪く、通常の区画蔟では蚕体が入らず座中繭を多発したり、蔟表面に吐糸する場合が多いので、百年蔟か類似の蔟器に上蔟させることが望ましい。なお、普通品種に比べて蛹化が1日程度遅いため、収繭作業は1日遅らせる等の注意が必要である。

《参考文献》
       農林水産省農蚕園芸局(1989)「
蚕の新品種技術資料 118」p.11〜14


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