8.蚕卵の人工孵化法(1924)

渡邊勘次、時澤静夫、新津伴吉、高橋重吉(1924)蠶卵人工孵化法に關する試驗−浸酸孵化法に就て−. 蠶業試驗場彙報 第22號:17-54

1.浸酸を行ふ適期は範圍比較的廣し:液温華氏百十五度の場合に其比重1.075の鹽酸を使用し浸酸時間を三乃至十分としたる時には産卵後四時間目のものに於ては孵化状態不良なる場合多けれども十二乃至二十七時間目のものの間には孵化状態に何等の區別を見出し難く、更に他の 場合に於て産卵後八乃至二十四時間目のものの間に優劣の差を認めざりき。
  而して右の期間内に於ては産卵後の經過時間の如何に拘らず常に同一の方法を以て浸酸を行ひ同様の結果を得たり。

2.浸酸の為使用する鹽酸液の温度、濃度及浸酸時間に就きては温度は華氏八十乃至百二十度の範圍に於て、濃度は十五乃至二十五%の間に於て夫々如何なる場合にも孵化を可良ならしむべき浸酸時間を見出し得べき、而して之等浸酸時間は液温の低き場合若くは濃度低き時には其範圍頗る廣く、液温又は濃度の高くなるに従ひ順次其範圍狭めらる。

3.浸酸後蠶種の取扱に就きては
 (イ)脱酸の為苛性曹達の水溶液を用ひたる時には一%液には三乃至九分、二%液には二乃至八分間浸漬せるものは、普通に清水を以て六乃至十分間洗滌したるものとの間に蠶卵孵化上優劣の區別なし。
 (ロ)脱酸の為水洗する水の温度が華氏六十乃至八十六度の間にありては孵化の結果に差別を生ぜず。
 (ハ)脱酸せざりしものは浸酸時間の短き場合に於て、脱酸したるものより反つて良好なる結果を示せり。
 (二)浸酸後引續き十二時間産卵臺紙を多濕状態にあらしめたるものは浸酸後直に乾き始めたるものと同様の結果を示せども、一日間以上多濕の儘放置したるものに於ては孵化歩合減少すると共に孵化不齊となれり。


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