19.人工飼料による全齢飼育(1960)

吉田徳太郎、松岡道男、木村孝一(1960)乾燥桑葉粉末を基本とする人工飼料による家蚕の飼育について.蚕糸試験場報告 15(10)543-586

1.乾燥桑葉粉末を基本とした人工飼料の調製とそれを用いた家蚕の飼育法確立を主眼として行われたものである。

2.蚕の全齢を飼育することのできた人工飼料の組成と調整法:
  冷凍乾燥桑葉粉末 5g、脱脂冷凍豆腐粉 1g、大豆粉 1g、澱粉 1.5g、蔗糖 1g、防腐液 10ml、蒸留水 5m(※防腐液はビタミンK30.1g、Na-dehydroacetate 0.2g、Na-sorbate 0.2gを蒸留水100mlに溶解したものである)
  前記の各材料をよく混和してペトリ皿に移し、加圧釜中で約15 lbs per square inchの圧力下で15分間蒸軟処理を施し、冷却後これを蚕齢に応じて適当な厚さと大きさに切り、給与直前にさらに蒸気殺菌を行い、これに冷凍乾燥桑葉の微粉末を少量散布して飼料とする。

3.飼育法の概要
  あらかじめフォルマリンで消毒した殺菌灯の設備がある温湿度調節可能な飼育箱内で上記の飼料を用いて蚕の幼虫をペトリ皿内で飼育する。その時の飼育中の温湿度は、稚蚕では2425℃、8090%、壮蚕では24℃7580%で、随時殺菌灯を点じて殺菌する。また給与回数は1日2回以上とし、その都度完全に除沙する。以上の操作は出来る限り無菌状態で行う必要がある。

4.このようにして得られた5齢壮蚕の一部は蛹化し、さらに成虫となった。


福田紀文、須藤光正、樋口芳吉(1960)人工飼料による蚕の飼育.日本蚕糸学雑誌 29(1)1-3

1.人工飼料の組成と調整法:桑葉粉末5g(国桑19号および一の瀬の桑葉を冷凍乾燥機で40℃以下で乾燥、粉末にし、80メッシュの篩にかけた)、澱粉1.5g、キナコ1g(いずれも市販品で、粉末にし、80メッシュの篩にかけた)、脱脂凍豆腐1g(市販の凍豆腐をエーテルで脱脂したものを粉末にし、80メッシュの篩にかけた)に、20%蔗糖水溶液5mlと防腐剤混合液10ml(ビタミンK3 0.1g、デヒドロ酢酸ナトリウム塩0.2gおよびソルビン酸ナトリウム塩0.2gを水100mlに加え加熱溶解した)を添加しよく撹拌した。これをオートクレーブで15分間殺菌し、冷蔵庫に保存した。

2.蚕の飼育:シヤーレに水を湿したろ紙、パラフィン紙、人工飼料、蟻蚕「(支115号×124号)×(日122×124号)」の順にのせ、蓋をかぶせ半無菌箱(温度2425℃、湿度9296%)中におき、蚕の飼育を行った。蚕に与えた飼料は調製した人工飼料を0.10.3mmの厚さにカミソリで切った細片をオートクレーブで15分間再び殺菌し12時間冷蔵庫に入れたものである。給与は1日2回、12時間間隔で行われた。

3.発蟻から結繭までの日数は平均45日で普通に桑で飼育した場合の約2倍を要したが、蛹期間は平均14日で、普通の桑飼育の場合と同程度であった。110頭の蟻蚕のうち営繭したものは36頭、蛹になったもの雌2頭雄22頭、蛾になったものは雌2頭雄22頭であった。熟蚕、蛹(化蛹6日目)および蛾の生体重はそれぞれ1.13g、0.62g(雌)、および0.33g(雄)であった。

4.蚕が吐糸した総絹物質量は1頭平均86mg(最高130mg)で、同一品種を桑の葉で飼育した場合の約20%(最高約30%)であった。また繭糸長は約450mであった。熟蚕を解剖してみると内容物の充実によりよく発達した絹糸腺が認められた。

5.交尾した蛾が生産した卵の1蛾当りの粒数は227で、その卵長および卵巾はそれぞれ1.291mmおよび0.952mmであった。


伊藤智夫、田中元三(1960)人工飼料による蚕児の飼育および5眠蚕の分離について.日本蚕糸学雑誌 29191-196

1.人工飼料の組成と調整法:桑葉粉末(150メッシュ以下のもの)50%、馬鈴薯澱粉15%、蔗糖20%、生大豆粉末(80メッシュ以下のもの)15%を十分に混合し、乾物重の1.5倍重の水を加え、直ちに約15分間蒸し、冷却後スライス状に切り蚕児に与えた。

2.蚕の飼育:(日112×支110号)×大造の蟻蚕15頭を選び飼育を行った。供試した15頭の内3頭が5齢起蚕までに死亡したが、残った12頭はこれ以後死亡することなく、すべて営繭した。

3.今回の飼育においては5眠蚕が出現したが(出現率は3/1225%)、今までの人工飼育では報告がない。一般に5眠蚕は栄養条件が不良な際に多く出現する傾向にあることが知られているが、今回の結果も栄養的には決して満足な状態ではなかったことを示す。なお5眠すべき経過をたどる5齢起蚕と5眠蚕とはならぬ5齢起蚕との体重の関係、両者の経過の相違などは、従来の5眠蚕の報告と一致している。

4.蚕児の経過、体重、繭質などは正常蚕より著しく劣っている。用いた品種が交雑種に大造を交配したF1であることに基づくと考えられる以上に劣っているが、飼育を通じて、いわゆる病蚕は1頭も出現しなかった点は特記されて良い。但し幼虫期に脱皮不能蚕が3頭出現した。脱皮現象と栄養とは何らかの関係があると考えられる。


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