20.自動繰糸工程管理技術(1961)

嶋崎昭典(1961)製糸工程の統計的管理法に関する研究 T.定粒繰糸工程の管理について.蚕糸試験場報告 16(6)403-529

1.製糸工程は,原料繭の性状変化の影響を著しく受けるので、適正な統計的管理技術なしに工程を的確に運営することは困難である。しかし、製糸工程の統計的管理は工程の特殊性から、機械化された大量生産の場を前提にして設けられている統計的品質管理方式をそのまま導入しても、製糸工務が要望する諸問題の本質的な解決には役立たない。著者は工程の特殊性とその運営について考察した結果、製糸の工程管理は「繰糸の過程で生糸の品質、能率、歩留りの偏移を迅速適正に推定し、直ちに基準状態へ工程を移行させる、いわゆるサーボ機構の役割を果たす」ものでなくてはならないとの結論に達し、これを具現する工程管理法について研究をすすめた。

2.落緒と繰糸能率ならびに歩留りとの関係:製糸工程で生糸を繰製する直接的生産操作の接緒は、定粒繰糸工程では、落緒生起の指示にもとづいて行われる。したがって繰糸能率は落緒特性によって表示することができる。一方落緒特性、生糸量歩合、練糸量歩合等はそれぞれ処理条件によって変化する。処理条件に伴う上述各項目の変化を解析した結果、それらは互いに処理条件を通じて密接な関連を有していることが明らかになった。その結果、落緒の生起性が基準状態にあるよう処理工程の諸条件を管理すれば、それに伴って生糸量歩合、練糸量歩合が基 準状態に維持されることが明らかになった。すなわち落緒の生起性が基準状態にあるよう工程を運営することによって、繰糸能率と歩留りの管理は可能であることが知られた。

3.製糸第一管理方式:一般に原料繭の落緒特性は平均値で表されてきた。しかし工程中に生ずる落緒の管理基準を設定するには、原料繭における落緒の分布特性を明らかにしなくてはならない。著者は落緒特性を表す項目として、1粒の繭に生ずる不時落緒数、繭層の各部位に生ずる不時落緒の出現性と解舒糸長の3種をあげ、それぞれの分布特性を処理条件との関係のもとに考察した。

4.製糸第二管理方式:製糸第一管理方式は能率、歩留りを管理する方法であった。それゆえこれと共に、生糸の品質を管理する工程管理方式が望まれる。生糸品質の多くは原料繭の性状に依存するので、生糸の品質は主としてそれの太さの均一性にむけられる。これは落緒、接緒間の時間的遅れにより生ずる不連続斑(糸条斑)と繭糸繊度曲線に依存する長期変化(繊度偏差)の二つに分けて考えることができる。このうち製糸工程の影響によって生ずる斑は主として糸条斑であるので、これを管理する工程管理方式について考えた。


嶋崎昭典(1961)製糸工程の統計的管理法に関する研究 U.定繊度式自動繰糸における生糸繊度制御系管理基準の設定. 蚕糸試験場報告 16(6)531-603

1.現在実用化されている定繊度式自動繰糸機は自己制御系を有していないので、繰糸工程を運営して目的生産を遂行するには、工程運行の中心的役割を果たしている生糸の繊度制御系を正しく制御する工程管理法の設定が必要である。

2.ここでは細限接緒点繰糸法を採用している定繊度式自動繰糸機において、原料繭の繊度特性が生糸の繊度特性を形成する過程の理論的構造を明確にして生糸繊度制御系の管理基準を見いだし有効適切な工程管理法の基礎を確立したいとの考えのもとに研究がすすめられた。


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