29.蚕微粒子病の集団検査法(1967)

1.ルイ・パスツールの研究により、病蛾の蚕卵から病蚕を生ずることが明らかにされて以来、1蛾別採種法により母蛾検査が行われてきた。わが国ではこの母蛾検査は法律をもって規定され、原々種および原種については全蛾を、普通蚕種については各掃立口数の大きさにより一定数の抜取検査を行なって、蚕種の採否を決定してきたが、その工程はほとんど手作業に依存していて、検査員による個人差が大きい傾向があった。さらに近年、検査作業の簡素化、能率の向上、検査精度の確保とともに、検査技術の統一化、標準化が重要な課題になってきた。

2.集団蛾検査は、磨砕のためのカッター式ミキサーと、磨砕液のろ過を主体とする検査装置と、ろ液を遠心分離する遠心器および鏡検のための位相差顕徴鏡から構成されている。

3.まず磨砕しようとする一定数の試料(原々蚕種14蛾、原蚕種28蛾、普通蚕種30蛾)をミキサーのカップに入れ、0.5%炭酸カリ溶液(70100ml)を加えて10,000回転(rpm)で2分間磨砕し、ついで2分間静置後、ろ紙および脱脂綿でろ過する。このろ液を1,500Gで3分間遠心分離し(ただし原々蚕種および原蚕種は水7080mlを加えて同条件で再遠心)、その沈渣に2%苛性カリ溶液を加え、振とう溶解して鏡検する。

4.鏡検判定には未熟胞子も認知できるように試作された低倍率の位相差顕徴鏡(オリンパスKP型)を使用する。

(蚕糸試験場病理部微粒子病研究室 上田金時、藤原 公、早坂昭二)


藤原 公(1984)蚕微粒子病の集団蛾検査法に関する研究.蚕糸試験場彙報 第120号:113-120

1.個体蛾の母蛾検査法は、蚕種製造業者の企業内検査としては検査費用の過大性に問題があり、また鏡検に熟練した検査員を多数確保するにも困難性があり、検査精度(正確さおよびばらつき)の低下も危惧されることから企業内検査に適する高精度で低費用の新しい母蛾検査法の開発が要望されるに至った(全国蚕種協会、昭和39年9月17日)。

2.本研究はこの要望を受けて着手した。

3.そこで、鏡検単位の蛾数を多数個とし、回転刃磨砕器で試料を磨砕し、ろ過および遠心沈殿によって磨砕液から胞子を集めて鏡検標本とする集団蛾検査法の開発研究を行った。また、検査精度を標準化するために検査機械器具の考案適用を検討し、蚕微粒子病検査の母蛾検査法として体系化した。

4.この集団蛾検査法は1968年蚕糸業法施行規則改正(農林省令第23号)によって実用化し普及した。その研究の大要を報告する。


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