32.蚕種研究の集大成(1969)

高見丈夫(1969)『蚕種総論』全国蚕種協会発行、pp371

 わが国の蚕種に関する研究報告は尨大な数にのぼっている。これだけの資料があれば、本来ならば、蚕種の技術はもはや名人芸をはなれて、電子計算機にたよれる可能性もあって然るべきであろう。しかしそれらの試験成績は、正しい吟味を尽されることなく放置されているので、これらの資料をそのまま電子計算機に覚えこませたら間違った答の出る心配の方が多い。

 私は戦後蚕糸試験場に入り、はじめて蚕種の研究にたずさわったのであるが、水野、渡辺、梅谷、高梨等の蚕種学の泰斗の本拠であったここにおいてさえ、これらの方々の考え方の基本が伝わっているとは限らず、しばしば困惑したことがある。研究の内容が真には理解されないままに方法だけが伝わっている場合が多いので、例外的な条件下では正しい蚕種の取扱いができず、思わぬ失敗をすることがあったのである。つまり研究によって生れた原理が理解されてもいないし、当然伝えられてもいないところに問題があるわけである。

 研究業績の数がいかに多くとも、その中に内在する原則的なものを掴まないと技術の進展は望み難い。本書は今までの多くの研究業績をできるだけ吟味して蚕種に関する現在の技術指針をたて、あわせて将来の研究推進の方向づけをしようとしたものである。もし本書が読者に対して、蚕種に関する多くの研究業績の内容を紹介するだけにとどまらず、蚕種に関する諸技術について解明すべき問題点を見出されたり、新らしい考えを持たれることに役立てば著者の喜びはこれにすぎるものはない。

 1.家蚕の生殖器官 2.原蚕飼育と造卵および蚕卵 3.上蔟・種繭保護と造卵および蚕卵 4.採卵 5.化性 6.蚕卵の形態、発生および生理 7.越年蚕種の保護・取扱い 8.人工孵化 9.催青 10.蚕種の調製および輸送 11.蚕種の事故 (引用文献1207編)


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