36.桑の新品種「しんいちのせ」(桑農林1号)(1970)

相田二三夫、藤原茂正、返田助先、竹之内和子、間 和夫、中島健次、松島幹夫、片桐幸逸、尾暮正義、長沼計作(1976)桑の新品種「しんいちのせ」(桑農林1号).技術資料 第85号:3-412-17

1.春秋兼用の稚壮蚕用品種として広く栽培されている“一ノ瀬”は葉質および収葉量にすぐれているが、地域によっては枝条が倒伏しやすく、肥培管理や収穫作業に難点がある。それらの欠点を改良するとともにさらに良質多収を図る目的で、“一ノ瀬”に枝条直立性の多収品種である“国桑第21号”を交雑し、得られた実生群中から本品種が選出された。

2.本品種はカラヤマグワ系に属し、“一ノ瀬”のもつ枝条の倒伏性を改良した新しい品種を意味するため、“しんいちのせ”と命名された。本品種の特性は次のとおりである。@姿勢は直立性。枝条の伸長は良好でしかも斉一であるが、枝条数は“一ノ瀬”よりやや少ない。また、矮小枝も少ない。節間長は“一ノ瀬”と同程度である、A日照不足、風雨、台風などによる枝条の倒伏は“一ノ瀬”より少ない。干ばつのさいにもよく伸長し、クワノアザミウマによる害も少ない、B葉は中型の4裂葉で光沢のある緑色を呈する。浅い2裂ないし全縁葉を混入する。葉の厚さは“一ノ瀬”よりやや薄い、C春の発芽は“一ノ瀬”より早く、新梢長、開葉数は同程度である、D春秋兼用壮蚕用としての年間収葉量は“一ノ瀬”と大差ない、E萎縮病・裏ウドンコ病に対する抵抗性は“一ノ瀬”と同程度であるが、縮葉細菌病には強い、F古条さし木の発根性は“一ノ瀬”と同程度であり、育苗は容易である、G蚕の飼育成績は“一ノ瀬”と大差ない。条桑育に対しては枝条の屈曲が少ないため給桑が容易であり、蚕座も高くならない適性を示す。また、“一ノ瀬”に比べて葉がしおれにくい。

3.本品種の適応地域は、関東地方以西の温暖地および四国、九州地方の暖地である。春秋兼用の壮蚕用桑として適する。枝条の倒伏が少ないので、条桑育および機械による管理・収穫に適している。うね間の広さは管理方式によって異なるが、直立性で枝条数がやや少ないため植付に当たっては株間を若干せまくすることが収量増加の面から必要である。ただし、耐萎縮病性は“一ノ瀬”と大差ないので、萎縮病激発地を避ける。


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