40.蚕卵の長期間保存法の研究(1972)

松野道雄、清水久仁光、清水文信(1972)蚕種の長期冷蔵抵抗力の品種間差異について.蚕糸研究 第85号:96-111

1.蚕卵の長期間保存については、伊藤(1962)、佐藤ら(1962)、江口ら(1963)の2年越し貯蔵方法が報告されている。それぞれの研究者はその一部の毛蚕を掃立て飼育した結果、通常の蚕種における飼育成績と大差のないことを認め、蚕種を長期間貯蔵することの可能性を示唆している。さらに荒川(1957)、江口ら(1963)は蚕品種によって長期冷蔵抵抗性に大きな差異がみられることを指摘し、伊藤(1962)は孵化成績の品種的分布から抵抗力の強い品種が日本種に多いことを報告している。

2.著者らも、保存蚕品種の省力的な系統保持を目的とした蚕種の長期間貯蔵方法を研究するため、まず多くの保存蚕品種について蚕卵の冷蔵抵抗性を調査し、その品種間差異から冷蔵抵抗力の強弱、および品種の特性について検討を行なった。

3.当場の保存蚕品種330品種を用いて、甲胚子時期から−2.5℃に9〜11ケ月間、冷蔵した単式冷蔵種と、−2.5℃に4ケ月間冷蔵した後、中間手入れを行って2.5℃に5〜7ケ月間、再冷蔵した複式冷蔵種について、蚕種の長期冷蔵抵抗力を、主として孵化歩合によって調査した。

4.単式冷蔵種と複式冷蔵種の冷蔵抵抗力を比較すると、一般的には後者の方が強く、両者の間には有意な正の相関が成立するが、この傾向とは著るしく異なる抵抗性を示す品種もあり、それぞれの特徴から、抵抗性をAIの9種類の型に分類して、該当する品種の摘出を行った。

5.抵抗力を系統別に比較すると、強い品種は日本種系および欧州種系に多く、支那種系には弱い品種が多かった。

6.冷蔵抵抗力と諸形質との関係では、蛹体重および産卵数との間に正の相関が認められた。


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