41.桑の新品種「ゆきしのぎ」(桑農林2号)(1972)

飯島邦治、大野与助、和田 實、牧 音榮、宮山健也、梅野 宏、南原克己、岡部 融(1976) 桑の新品種「ゆきしのぎ」(桑農林2号).技術資料 第85号:5-618-19

1.積雪地の桑園に多発する桑胴枯病は、雪の多い年ほど被害が大きく、桑品種によって被害程度が異なる。積雪地帯に広く栽培されている「剣持」は葉質が比較的良好で多収性を示すが、胴枯病に弱く、耐胴枯病性の在来品種は一般に晩秋蚕期の葉質劣り、萎縮病に弱い傾向がある。

2.これら既存品種の欠点を改良する目的で、良質多収の育成系統「谷No.834」に胴枯病に比較的強い「橘桑」を交雑し、得られた実生の中から本品種が選抜された。

3.本品種はヤマグワ系に属し、「剣持」より多収性で胴枯病に強く、中雪地帯に適する意味を表わすため、「ゆきしのぎ」と命名された。特性の概要は以下のとおりである。@全般的な形質は雄親である「橘桑」によく似ているが、姿勢は直立性である。枝条の伸長は良好で枝条数は多く、節間長は「剣持」なみである。枝条は暗灰褐色を呈し、表面はやや粗で中型のだ円形の皮目が密に存在する。冬芽は赤褐色の中型長三角形である、A葉はやや大型の4〜多裂葉で光沢のある緑色を呈し、欠刻は深いが葉幅は広い特徴があり、晩秋期の硬化は比較的おそい、B春の発芽は「剣持」と同程度で中生である。春の新梢長「剣持」とほぼ同じであるが、先枯れおよび裾上りが少なく、新梢割合がとくに多い。秋の正葉割合も高い、C春・秋を通じてよく繁茂し、多収性で収葉量は「剣持」より20%程度多い、D胴枯病には「剣持」より強いが、「新桑2号」「ふかゆき」より弱く、「橘桑」と同程度の抵抗性品種である。萎縮病には「剣持」よりやや強い、E古桑さし木の発根性は「一ノ瀬」や「橘桑」よりすぐれており、育苗は容易である、F条桑による蚕の飼育成績は「剣持」と同程度で良好である。

4.本品種の適地は「剣持」「橘桑」等が栽培されている中雪地帯であり、春秋兼用および夏秋専用桑として適する。多肥栽培により収量がさらに増す傾向があるので、肥沃地への導入が好ましい。多雪地では胴枯病被害率がやや増加するので、一春一夏法や交互伐採法の収穫方法をとるようにする。また、萎縮病に対しては「剣持」よりやや強い程度であるので、萎縮病激発地への導入はさける。


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