56.桑の新品種「しんけんもち」(桑農林5号)(1981)

東城 功、渡辺四志栄、早坂七郎、北浦 澄、岡部 融、松島幹夫、矢崎利一、原島典雄、中山喜平(1981)桑の新品種「しんけんもち」(桑農林5号).技術資料 第97:3-410-13

1.少雪寒冷地では、「改良鼠返」、「一ノ瀬」、「剣持」などが広く栽培されている。耐寒性品種として「かんまさり」が昭和41年に育成され、一部で栽培されているが、晩秋期の葉質などになお難点が指摘されている。そこで、これらに代る多収で硬化のおそい少雪寒冷地向品種の育成を目的に、耐寒性で葉が厚く葉質良好な4倍性「剣持」を母、硬化がおそく枝が直立で伸長が良く多収の「国桑第21号」を父として交雑を行い、得られた実生中から本品種を選抜した。

2.本品種はヤマグワ型に属し、「剣持」の2ゲノムをそのままとり入れた3倍体の多収品種の意味を表し「しんけんもち」と命名された。特性の概要は次のようである。@姿勢はやや展開型である。枝条数多く、枝条は直で伸長も良く斉一である。節間長はやゝ長い、A冬芽は褐色、樹色は紫褐色で「剣持」に似るがやや淡く、樹肌も滑らかである、B葉はやや大型で幅広の4裂葉で、厚く弾力性に富み滑らかで光沢が強く、濃緑色である。晩秋の硬化は「改良鼠返」および「一ノ瀬」と大差がない、C春の発芽は「改良鼠返」とほぼ同じで、「一ノ瀬」より数日早く、その後の発育も旺盛で春蚕掃立期および壮蚕期の新梢長は長く、葉数も「改良鼠返」と同様である、D春秋兼用壮蚕用としての年間収葉量は、「改良鼠返」および「一ノ瀬」に比べかなり多い、E耐寒性を有し、萎縮病および胴枯病の抵抗性は中程度であるが、縮葉細菌病および裏うどんこ病には強い。また、シントメタマバエの被害も少ない、F古条さし木の発根性は極めて良く、種茎直播による速成密植桑園の造成用に好適である、G蚕の飼育成績は春および晩秋蚕期ともに「改良鼠返」および「一ノ瀬」を凌ぎ、葉質は春秋ともに良好である。

3.本品種の適応地域は、東北、中部を中心とする少雪寒冷地で、春秋兼用、夏秋専用または速成密植桑園用として壮蚕および稚蚕用桑に適し、「かんまさり」「改良鼠返」、「一ノ瀬」などに代わるものと考えられる。耐萎縮病性は中程度なので激発地への栽植は避け、場所によっては夏切開始時期(通常は植付3年目)を1〜2年おくらせるか、あるいは交互法をとり入れることが望ましい。

※東城 功、渡辺四志栄、早坂七郎(1986)3倍性桑新品種“しんけんもち”及び“あおばねずみ”の育成.蚕糸試験場報告 30(2)151-250


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