57.桑の新品種「ときゆたか」(桑農林6号)(1981)

相田二三夫、藤原茂正、竹之内和子、返田助光、間 和夫、中島健次、松島幹夫、片桐幸逸、尾暮正義、長沼計作、原島典雄(1981)桑の新品種「ときゆたか」(桑農林6号).技術資料 第97号:5-614-21

1.近年、桑園の萎縮病被害は全国に及ぶ、特に温暖地および暖地では著しく、的確な防除法の確立とともに抵抗性の優良品種の育成が急務とされている。最も広く栽培されている「一ノ瀬」は中程度の抵抗性を有するが、耐倒伏性や縮葉細菌病抵抗性に欠点があり、また、「大島桑」、「収穫一」などの耐萎縮病性品種はいずれも収量や夏秋期の葉質に難点がある。そこで、「一ノ瀬」の良質多収性と「大島桑」に匹敵する耐萎縮病性を備えた耐倒伏性品種を目的に「一ノ瀬」を母、「国桑第21号」を父として交雑を行い、得られた実生中から本品種を選抜した。

2.本品種はカラヤマグワ系に属する。樹勢強健で萎縮病にも強く、常に安定した収穫が期待できる品種の意味で「ときゆたか」と命名された。特性の概要は次のようである。@姿勢は直立型である。矮小枝少なく、側枝も極めて少ないが条径やや太く、枝条数および枝条長は「一ノ瀬」にやや劣る。節間長は短い、A樹色は灰褐色で、冬芽は正三角をなし、灰白色で枝条に密着して直立に着生する、B葉は中型の楕円形全縁葉に2〜4裂葉を混じ、春は全縁葉が多いが、秋には裂葉の混入が多い。厚さは「一ノ瀬」と同程度で、平滑でやや光沢があり濃緑色である。晩秋の硬化はややおそい、C春の発芽は「一ノ瀬」より2〜4日早く、春蚕5齢盛食期の新梢長はやや短いが葉教は多い。雌花を有し、着椹は「一ノ瀬」と同程度である、D春秋兼用壮蚕用としての年間条桑収量および条桑量に対する新梢、葉量割合は「一ノ瀬」と大差ない、E台風による枝の倒伏少なく、耐萎縮病性は「大島桑」を凌駕する。また、縮葉細菌病および裏うどんこ病の被害も少い、F古条さし木の発根性は「一ノ瀬」と大差ないが、夏秋中間伐採後の再発芽機能が劣る、G蚕の飼育成績は、春秋ともに「一ノ瀬」に遜色ない。

3.温暖地の萎縮病発生が問題とされる地域において、春秋兼用の壮蚕用桑として「大島桑」、「収穫一」、「赤芽魯桑」などに代わり普及が考えられる。夏秋中間伐採後の再発芽が劣る欠点があるので、収穫は春および晩秋蚕期に主体をおき、夏および初秋蚕期は軽い間引き収穫とするなど収穫法に特に注意する必要がある。


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