58.桑の新品種「はやてさかり」(桑農林7号)(1981)

樋田仁蔵、山本 賢、村上美佐男、岩田 益(1981)桑の新品種「はやてさかり」(桑農林7号). 技術資料 第97号:7-822-33

1.現在、四国、九州などの西南暖地では、「一ノ瀬」が最も広く栽培されている。しかし、多雨地帯では風雨によって枝条が倒伏し易く、また、縮葉細菌病を多発することが多い。昭和51年に育成された耐倒伏性暖地向品種の「みなみさかり」も平坦地には好適であるが、山間地や高標高地には先枯れが著しく、不向きである。そこで、これらに代わる良質多収で耐倒伏性の山間地や高標高地にも適する暖地向品種の育成を目的とし、硬化がおそく良質多収の「改良一ノ瀬」を母、枝条が直立で伸長が良く多収の「国桑第21号」を父として交雑を行い、得られた実生中から本品種を選抜した。

2.本品種は、カラヤマグワ系に属する。風に強く耐倒伏性で、よく繁茂する多収性品種の意味で「はやてさかり」と命名された。特性の概要は次のようである。@姿勢はやや展開型である。枝条数は多いが条径がやや太く、枝条の発育は「しんいちのせ」に幾分劣る。節間長は短い、A枝条は直で、樹色は灰褐色である。冬芽は赤褐色で中型の長三角形をなし、枝条に密着して直立に着生する、B葉は中型の4裂葉で光沢を有し、厚く滑らかで緑色を呈し「改良一ノ瀬」に似る。晩秋の硬化は「一ノ瀬」と大差ない、C春の発芽は「しんいちのせ」より1〜2日早く、その後の発育も良好である。雄花を有するが、花穂は少ない、D春秋兼用(夏切)の壮蚕用桑としての年間収量は「しんいちのせ」と大差ないが、夏秋専用(春切)では多い、E先枯れは「しんいちのせ」と大差ない。風雨による枝条の倒伏も少ない。耐萎縮病性は「しんいちのせ」程度とみられる。縮葉細菌病には「一ノ瀬」に比べかなり強い、F接木および古条さし木の発根性は良好で増殖は容易である。夏秋中間伐採後の再発芽性が良い、G蚕の飼育成績は「しんいちのせ」と大差がない。

3.先枯れが少ないので暖地の平坦地ばかりでなく山間地や高標高地にも適する。再発芽性が良いので春秋兼用(夏切)の壮蚕用桑のほか夏秋専用(春切)の稚蚕用桑にも適し、「一ノ瀬」、「改良鼠返」、「魯桑」などに代わるものと考えられる。なお萎縮病激発地への導入はさけるべきである。

※樋田仁蔵、山本 賢、岩田 益、村上美佐男(1982)桑の新品種“はやてさかり”の育成とそ    の性状について.蚕糸試験場報告 28(5)613-666


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