62.桑の新品種「あおばねずみ」(桑農林8号)(1983)

東城 功、渡辺四志栄、早坂七郎(1983)桑の新品種「あおばねずみ」(桑農林8号).技術資料 第102号:1-9

1.「あおばねずみ」は,蚕糸試験場東北支場において、昭和3240年にコルヒチン処理で養成した4倍体(「剣持」の自然交雑種子)を母本、「改良鼠返」(2倍体)を父本に用い、41年に交雑され、4245年に個体選抜された。昭和4650年に系統選抜試験に、5156年に岩手、長野の2県で系統適応性検定試験に供試され、栽培および蚕飼育適性が検定された。一方、昭和5556年愛知、鳥取、徳島の3県で特性検定試験に供試され、耐萎縮病性が検定された。

2.東北地方や山間高冷地などの少雪寒冷地では、改良鼠返や一ノ瀬、剣持などが多く栽培されているが、これにまさる葉質,耐寒性を有し、収量の多い品種として昭和56年に「しんけんもち」が登録され普及されつつある。「改良鼠返」や「一ノ瀬」は縮葉細菌病、クワシントメタマバエに弱く開発桑園や異常低温下での発育があまり良好でなく収量が少ない。そこで、これらの抵抗性を有し、低温下でもよく伸長する多収良質の改良鼠返型品種を目標に、樹姿がよく発育良好な4倍体(No.92)を母、現行優良品種「改良鼠返」を父として交雑を行い、得られた実生中から本品種を選抜した。

3.本品種はカラヤマグワ系に属する3倍体で「改良鼠返」の血を引き、よく似ているところから“あおばねずみ”と命名された。特性の概要は次のようである。@姿勢は直立型である。枝条数多く、枝条は直で伸長もよく斉一である。節間長は短い、A冬芽は濃褐色、樹色は灰白色で「改良鼠返」に酷似し、樹肌も滑らかである、B葉はやや大型の幅広い4裂葉で厚く、葉面はやや粗で光沢は少なく、「改良鼠返」よりやや濃い緑色である。晩秋の硬化は「改良鼠返」と大差がない、C春の発芽は「改良鼠返」とほぼ同じで、「一ノ瀬」より数日早く、その後の発育も旺盛で壮蚕期の新梢長、葉数は「改良鼠返」なみである、D春秋兼用壮蚕用としての年間収葉量は、「改良鼠返」および「一ノ瀬」に比べかなり多い、E耐寒性を有し、萎縮病、裏うどんこ病の抵抗性は中程度であるが、縮葉細菌病およびクワシントメタマバエには強い、F古条さし木の発根性は「一ノ瀬」なみで、再発機能はよい、G蚕の飼育成績は春秋とも「改良鼠返」なみである。

4.本品種の適応地域は、少雪寒冷地で特に東北地方のヤマセ地帯にも適し、春秋兼用、夏秋専用および密植速成桑園の壮蚕用として「改良鼠返」あるいは「一ノ瀬」に代わるものと考えられる。耐萎縮病は中程度なので激発地への栽植は避け、所によっては夏切開始時期(通常は植付3年目)を1〜2年遅らせるか、あるいは交互法をとり入れることが望ましい。

※東城 功、渡辺四志栄、早坂七郎(1986) 3倍体桑新品種“しんけんもち”及び“あおばねずみ”の育成.蚕糸試験場報告 30(2)151-250


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