64.桑園における有機物施用基準の策定(1984)

桑園土壌有機物研究班(1984)桑園における土壌有機物変動の予測と有機物施用基準の策定.蚕糸試験場彙報 第121号:1-22

  ※第1章 植松勝子、鈴木 誠、木内美江子、渋谷加代子;第2章 高岸秀次郎、白田和人、川内郁緒;第3章 五島 晧、塩見文武、愛原秋義;第4章 高岸秀次郎

1.稲わら堆肥施用による土壌有機物水準の変動は土壌によって異なるが、最も効果が認められた砂丘土では毎年2,250kg/10aを4年間連用した場合、土壌炭素は原水準の29%増となった。この場合の無施用区は14%減であった。沖積土でも炭素の集積が認められたが、火山灰土については明らかでなかった。

2.各種有機物を連用した場合、全般に桑条よりもおが屑の方が土壌炭素の増加率は高く、750kg/10a/年を施用した場合より1,500kg/a/年の方が増加は明らかであった。しかし桑収量は桑条、特にこれを堆肥化した方が高く、作物に対する有機物施用効果の多様性が示唆された。

3.沖積土や赤黄色土のように炭素含量の低い土壌では、毎年t単位で有機物を施用すると、施用位置によっては4〜5年で無施用に比べて有機物水準が3〜7倍を示すところがあった。施用土壌の炭素率は施用有機物の影響をうけ、光学的分析によれば、施用された有機物はまず未熟な腐植酸の型で集積するものと推定された。

4.ガラス繊維炉紙埋設法によれば、1年目の乾物残存量は、稲わら、桑条が3050%、おが屑6080%であり、全般に有機物資材は1年目で大半が分解され、その後難分解性成分が徐々に分解されるものと推定された。

5.無機肥料の長期連用によって土壌有機物水準が変動し、その増減に対しては施用内容に伴う雑草量の多少、土壌pHの変化などが関与するものと推定された。

6.有機物の連用によって土壌有機物含量が増加し、その増加から推定される土中堆肥の減耗率は原土壌炭素の減耗率を5%/年として約60%、稲わらマルチの場合は5060/年であった。

7.現地の沖積土桑園で調査された土中堆肥の6月〜11月の全炭素減耗率は、乾性土壌下層土で50%前後、適潤土壌数%〜30%、湿性土壌20%以下であり、水分環境で異なることが認められた。

8.有機物施用により無機化窒素量も増大し、その量は土壌窒素の各画分と高い相関を示した。しかし蓄積した土壌炭素との間に常に高い相関があるとは限らず、また無機化窒素量の高低も、土壌pHや他の化学性の如何によって必ずしも桑生育に反映しなかった。

9.有機物の施用を中止すると土壌有機物の減耗が進み、単純計算による減耗率は表土、で6%前後、下層土でおおよそ4%であった。

10.稲わらを連用した火山灰土桑園、赤黄色土桑園および沖積土桑園において、稲わら継続施用標準施肥区、稲わら施用中止標準施肥区および同倍量施肥区を設け、土壌中の炭素含量の年次変動を5年間追跡し、次の結論を得た。
 @土壌中の炭素含量の年次変動は数年程度であれば直線的変動として扱い得る。
 A標準施肥区の土壌炭素の年平均減耗率は火山灰土桑園表層土0.6、下層土0.3、赤黄色土桑園表層土1.9、下層土2.5、沖積土桑園表層土2.8、下層土2.5%であり、土壌仮比重を考慮した10a(土層30cm)当たりの土壌炭素減耗量は火山灰土桑園77、赤黄色土桑園107、沖積土桑園97kgと試算された。
 B10a当たりの土層30cm中の炭素増加量と施用炭素量から求めた稲わら炭素の年平均残存率は火山灰土桑園27.8、赤黄色土桑園37.7、沖積土桑園35.1%であった。
  これに基づく標準施肥区の土壌炭素減耗量を補うに要する稲わら施用量は三桑園においてともに約800s/10a/年と試算された。
 C火山灰土桑園と赤黄色土桑園では倍量施肥によって土壌炭素の減耗が増大した。

11.以上の結果をもとに、有機物施用基準を試算した。


 研究成果の目次に戻る