85.精巣・卵巣の凍結保存法(1988)

Hiroshi Shinbo (1989) Survival of larval ovaries and testes frozen in liquid nitrogen in the silkworm, Bombyx mori. Cryobiology 26: 389-396

1.実験には、「黒縞」および「日140号×支145号」を用いた。幼虫から取り出した、精巣および卵巣は、−7℃まで一定のプログラム(1℃/分)で冷却したのち、−7℃に10分おいた後、−35℃まで、0.10.31.0℃/分で冷却した後、液体窒素中に保存した。

2.同時期に生殖巣を除去した幼虫(日140号×支145号、両原種とも斑紋限性)の雄、雌に、凍結保存しておいた精巣あるいは卵巣を移植した。変態が進み、蛾になった時点で、処理した雌および雄を、それぞれ無処理の日140号×145号の雄および雌と交尾させ、蚕卵状態を調査した。

3.産卵数は少なかったが、いずれの場合にも得られた受精卵から孵化した幼虫は、遺伝的マーカーである黒縞を有しており、ドナー由来であった。


新保 博、北澤敏男、今西重雄、木口憲爾、村上昭雄(1991)カイコ遺伝資源の長期保存法−卵巣凍結・融解条件及び単為発生処理の効率化について.蚕糸・昆虫農業技術研究所研究報告 第2号:47-63

1.この研究は、農林水産技術会議事務局特別研究「動物遺伝資源の長期保存法に関する研究」(19861988)の一部として行われた。

2.卵巣凍結−移植−単為発生系によりカイコの遺伝資源を長期間保存する場合の問題点、とくに凍結・融解条件および単為発生誘導処理の効率化について検討した。

3.種々の条件で凍結・融解した卵巣を宿主幼虫へ移植し、宿主が成虫化した時点の完成卵を指標として、最適処理条件を調べた。その結果、凍結保存には5齢より4齢幼虫の卵巣が適していること、−7から−35℃までの卵巣の冷却速度は、0.1〜1℃/分の範囲内では完成卵数に差がないこと、グリセロールとDMSOは共に凍結保護剤として有効なことが示された。

4.卵巣の凍結・融解処理が卵形成におよぼす系続間差異を調べた結果、4系統では、卵巣の凍結・融解処理により完成卵数が4070%減少したが、他の6系統では処理の影響は認められなかった。

5.N106×カンボージュの凍結・融解卵巣を4齢幼虫へ移植し、宿主が成虫化した時点で卵巣卵に温湯処理を施したところ、単為発生卵が高率で得られることが分かった。

6.単為発生卵由来の孵化幼虫を得るには、通常温湯処理(46℃18分)により単為発生を誘導し、その後浸酸して休眠を打破するが、卵巣卵を直接46℃18分間浸酸(比重1.075)することによって、単為発生誘導効果と休眠打破効果が同時に得られることが確認された。

7.カイコの品種間で単為発生率に差がみられ、「大草」、「黒蛾(Bm)」、「pS I-a」等では発生率が低く、孵化個体は皆無であった。「N106号」、「ひので(U)」および「褐円(L)」では40%以上が単為発生したが、孵化した個体はごく少数であった。しかしながら、これらの系統にカンボージュを交配したところ、F1の単為発生率および孵化率が共に向上した。

8.得られた単為発生個体は雌個体のみで、雄はまったく得られなかった。


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