88.凍霜害を誘導する氷核活性細菌の特性(1988)

佐藤 守、片桐幸逸、高橋幸吉(1985)クワ縮葉細菌病菌Pseudomonas syringae pv. moriのプラスミドパターンと病原性、氷核能力等との関係.蚕糸試験場報告 30(1)101-121
加藤祐輔、白田 昭、高橋幸吉(1991)氷核活性細菌Pseudomonas syringae pv. moriにおける氷核形成能の温度依存性.蚕糸昆虫研究 第4号:65-73

1.1981年春に、北関東やその他の広域に発生した桑越冬芽の枯死を調査する過程で、その原因が前年の初霜によるもので、氷核活性(ice nucleation activity, INA)細菌が関与していると思われる事例が見出されたため、桑の凍霜害と細菌の氷核能力との関連について研究を行った。

2.蚕糸試験場桑園における6年間にわたる芽葉の表生細菌の調査結果では、INA細菌のほとんどが桑縮葉細菌病菌Pseudomonas syringae pv. moriP.s.m.)であり、本細菌の約50%がINA能力を持つ。

3.この細菌は芽に表生越冬し、春の霜害発生時期に向けて増加する傾向がみられ、芽葉における検出菌量は、凍結を起こすに足るものであった。

4.INAは生菌濃度106細菌/ml以上で起こり、加熱、ストレプトマイシン、テラマイシン処理、紫外線照射などで失活し、培養温度では28℃で1〜数日、32℃以上で1〜数時間でも失活する。

5.桑苗の葉面に約108細菌/mlINA細菌液を噴霧結露させ、−2〜−3℃で数分間処置すると凍害を起こしたが、非INA菌株および水のみでは過冷却状態のままであった。

6.P.s.m.INA菌株は、非INA菌株よりも著しくプラスミド数が少ない傾向があるが、INAは核内遺伝子に支配され、変異原性薬剤処理でINAの低い突然変異株が誘発された。

7.野外実験では、桑の萌芽期の降霜(1987年4月14日、−2.2℃、但し葉温は更に1〜2℃低い)前にINA菌株を散布した区の凍害芽率は、無散布に比べて越冬枝で12%高く、銅水和剤の降霜5日前散布では、無散布に比べて越冬枝で8%、春切株で36%低く、INA細菌の存在は、桑の霜害を増幅しているとみなされた。

※佐藤 守、渡部賢司、塚田益裕「氷核活性細菌およびその使用」(特許登録:30600102000年4月28日)


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