94.クワのGUS遺伝子の導入(1989)

Machii, H. (1990) Leaf disc transformation of mulberry plant (Morus alba L.) by Agrobacterium Ti plasmid. J. Seric. Sci. Jpn. 59(2): 105-110

1.バイオテクノロジーの進展に伴い、外来遺伝子の導入による新形質付与作物の作出が精力的に行われており、既に幾つか形質転換作物の隔離栽培試験が実施されつつある。しかし、クワなどの木本作物においては、一部の樹種を除いて外来遺伝子の導入に成功しておらず、遺伝子導入技術の確立が急がれている。そこで、クワの形質転換技術を開発するため、リーフディスク法によりクワに外来遺伝子の導入を試みたところ、この外来遺伝子がクワ幼植物体で発現したことが確認された。

2.外来遺伝子としては、大腸菌由来のカナマイシン耐性遺伝子とβ-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子を持つバイナリーベクターpBI121を用いた。これらの外来遺伝子のクワへの導入手順 はつぎのとおりである。
 まず、トリペアレンタルメイティング法により、ヘルパープラスミドpRK2013の働きを利用して、土壌細菌
Agrobacterium tumefaciens LBA4404TiプラスミドpAL4404pBI121を導入した。つぎにリーフディスク法によって、クワ品種“おおゆたか”および“みなみさかり”の葉片を、このアグロバクテリウムの懸濁波が添加されたMS液体培地に2日間浸漬して、アグロバクテリウムに感染させた後、カナマイシンを含むMS寒天培地に置床して不定芽の誘導を行った。

3.クワの細胞はカナマイシンに対して感受性であり、GUS活性も認められていないので、目的の外来遺伝子が導入された植物体は、カナマイシンによる選択とGUS活性の発現で確認できる。本実験では、置床2週間目頃からカナマイシンに耐性の不定芽が誘導され、置床50日後にはそのうちの数個体がシュートを展開した段階の幼植物体になった。

4.そこで、これらの幼植物体の薬を磨砕して、その液のGUS活性を分光蛍光光度計によって調べた。すなわち、メチルウンベリフェリルグルクロニド(MUG)を基質としてGUSが作用するとメチルウンベリフェロン(MU)が合成され、これに紫外線が照射されると蛍光を発する性質があることを利用してMUの濃度を測定した。その結果、高いGUS活性を示す個体が認められ、GUS遺伝子の発現が確認された。

5.なお、GUS活性を示した形質転換体の出現頻度は、供試葉片当たり、“おおゆたか”で3.7%、“みなみさかり”で1.9%であった。

6.以上のことから、本法によりクワに外来遺伝子を導入できることが明らかとなった。


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