100.桑の新品種「ゆきまさり」(桑農林11号)(1989)

和田 實、牧 音榮、宮山健也、岡部 融、山田景三(1989)桑の新品種「ゆきまさり」(桑農林11号).技術資料 第119号:1-11

1.積雪地に最も多く栽培されている「剣持」は、収量も多く良質であるが、胴枯病抵抗性は「中」程度で裏うどんこ病に弱い。また、「ふかゆき」「ゆきしのぎ」「ゆきしらず」などは、これらの欠点を改良した特徴のある品種であるが、なお伸長性や葉質に難点がある。

2.近年、中・多雪地帯の養蚕は、主産地が中山間地に一段と地域特化する傾向にある。さらに、桑品種に対する要望も多様化し、養蚕経営における生産性向上をはかるため、胴枯病に強い良質・多収品種の育成が養蚕・栽桑上の最大の課題として強く望まれている。そこで、更に良質・多収で耐病性(胴枯病・萎縮病・裏うどんこ病)に優れた中・多雪地に適応する優良品種の育成を目標とした。

3.本品種は、昭和48年に蚕糸試験場栽培部桑育種第2研究室において、「剣持」に良質・多収性を付与するため、コルヒチン処理(冬芽)を施して育成した同質4倍体「CL3-40」(2n56)を雌親に、胴枯病に強く枝条伸長の良好な良質の交雑系統「谷No.1584(剣持×愛国桑)」(2n28)を雄親に用いた交雑実生から選抜・育成されたものである。旧系統番号は「谷73-01」であり、昭和49年〜53年に個体選抜試験を、昭和53年〜56年に系統選抜試験を行った結果、優良な成積を収めた。

4.そこで、昭和57年〜61年に愛知県、鳥取県、徳島県の各試験地で萎縮病抵抗性検定試験を実施するとともに、昭和58年〜63年に山形県、新潟県の2試験地における系統適応性検定試験(1系統3連制:5アール)に供試し、栽培試験および飼育試験が行われた。その結果、胴枯病抵抗性で雪に強く、良質・多収性であることが確認され、積雪地養蚕の生産性に貢献することが期待されるため平成元年6月7日、「桑農林11号」に登録され「ゆきまさり」と命名された。

5.本品種の特性の概要は次のとおりである。@本品種はヤマダワ系に属する3倍休である、A低幹根刈仕立および中刈仕立の樹型は「剣持」と同程度の「やや展開」型である、B枝条は褐色で一部横臥するが直立である。枝条伸長は良好であり「ふかゆき」より優り「剣持」と同程度の「やや長」である。枝条数も多い、C節間長は「ふかゆき」より長く、「剣持」並みの「中」である。冬芽は大型の三角形で褐色を呈し枝条に平行直立する、D葉形は春秋とも2裂〜4裂葉が混在し、大型で厚い。葉面は光沢を有し縮皺も少ないが、「剣持」より「やや粗」である、E春季の発芽は「剣持」「ふかゆき」と大差はない。その後の発育は良好である。先枯れは少ない、F低幹根刈仕立の夏切法および中刈仕立の交互法による壮蚕用の年間収葉量は「ふかゆき」「剣持」よりかなり多い、G桑胴枯病抵抗性は「剣持」「ふかゆき」より高い。萎縮病には「やや弱い」。晩秋期の葉の硬化は「剣持」より晩く、裏うどんこ病は少なく、蚕飼育成績による飼料価値は「剣持」「ふかゆき」よりかなり良好である、H古条挿木の発根性は極めて良好で、桑苗の自給生産に適する。

6.本品種の適応地域は東北・北陸・山陰および東山の一部の積雪地帯であり、春秋兼用・夏秋専用桑園用として春秋の壮蚕に適する。桑萎縮病にはやや弱いので、萎縮病激発地帯では媒介昆虫の防除に留意する必要がある。中刈仕立交互伐採地帯では、成育初期の株作りが大切であり、栽植後3年目からの夏切りが望ましい。

※山田景三、牧 音榮、宮山健也、和田 實、岡部 融(1990)桑新品種「ゆきまさり」の育成. 北陸農業試験場報告 第32号:105-122


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