108.広食性蚕用人工飼料(1991)

柳川弘明、渡辺喜二郎、中村匡利(1989)広食性蚕利用による人工飼料への家畜用飼料素材の導入.日本蚕糸学雑誌 58(5)401-406

1.魚粉や酵母など家畜用飼料素材を添加した人工飼料に対する蟻蚕の摂食性並びにその後の成長について、原種、交雑種および広食性蚕の間で比較した。その結果、用いた飼料に対する摂食性は蚕品種によって著しく異なり、日本種系統の沢J及び日01号の摂食性は良好で生存率も高いが、中国種系統の中01号では全ての飼料区で5日後まで生存する個体は認められなかった。

2.交雑種の摂食性は極めて低く、魚粉、蚕蛹粉末およびアルファルファ添加区では大部分の幼虫が死亡した。一方、育成中の広食性蚕はこれらの飼料に対して極めて高い毛振るい率を示し、その後の生存率も高いことが分かった。また、広食性蚕は飼料に桑葉粉末を5%添加すると供試した大部分の飼料区で100%の毛振るい率が得られ、生存率も向上した。

3.以上の結果から、広食性蚕を利用することによって家畜用飼料素材の導入が可能となり、桑葉粉末の添加量も5%程度まで削減できることが明らかとなった。


柳川弘明、渡辺喜二郎、鈴木 清(1991)低コスト人工飼料の開発−線形計画法による広食性蚕人工飼料の開発−.蚕糸昆虫研報 第3号:57-75

1.広食性蚕に適した人工飼料の組成を開発するに当たり、摂食性や成長に及ぼす各種飼料素材の影響を検討し、それらの結果に基づいて、線形計画法による齢別飼料の設計を試みた。また、飼料素材や栄養素の設定条件と飼料組成、飼料中の栄養素含量、シャドーコストなどを明らかにするとともに、設計された飼料について1〜4齢または全齢人工飼料育を実施した。

2.広食性蚕の摂食性や成長に及ぼす飼料素材の添加量について検討し、桑葉粉末および砂糖の削減、クエン酸およびアスコルビン酸等の適正添加量を明らかにした。しかし、飼料水分を保持するためのカラギーナンの削減は困難であった。

3.広食性蚕の1〜4齢人工飼料育に適したLPY-131飼料を開発した。本飼料の3齢用および4齢用については線形計画法によって設計し、桑葉粉末および砂糖の削減、トウモロコシ粉末、脱脂米糠および菜種カスの導入、無機物およびビタミンB群の簡素化などが可能となることを 明らかにした。

4.線形計画法における飼料素材の添加条件および栄養素の最少必要量などをさらに改善し、広食性蚕の飼育に適したLPY-141飼料を開発した。本飼料は1〜2齢用、3齢用および4齢用から成り、その乾物飼料価格は現行の蚕品種を対象にした市販飼料に比較して著しく低減されることを明らかにした。

飼料素材 1〜2齢用 3齢用  4齢用
桑葉粉末
脱脂大豆粉末
トウモロコシ粉末
脱脂米糠
菜種カス
無機塩混合物
ビタミン混合物
クエン酸
大豆油
フィトステロール
カラギーナン
防腐剤
4.000
31.983
30.000
 
18.333

2.502
 1.224
4.000
1.855
0.194

 5.000
0.910
4.000
35.566
30.000
9.763
 5.000
2.537
 1.219
4.000
1.806
 
 0.200
 5.000
0.910
− %
36.782
30.000
11.423

8.000
2.669
1.235
3.000
1.779
0.204
4.000
0.910
合  計 100.001 100.001 100.002

5.LPY-141飼料における飼料素材および栄養素の制限条件などから、桑葉粉末や酵母のシャドーコストを試算するとともに、制限性の強い栄養素については、単位量当たりのシャドーコストを明らかにした。

6.LPY-141飼料による広食性蚕の1〜4齢人工飼料・5齢桑葉育の飼育成績および繰糸成績は良好であり、実用的にも十分に利用可能であることが分かった。また、本飼料は蚕桑技術協力試験および蚕品種性状調査委託試験などに供試され、その有用性が確認された。

7.線形計画法により5齢用飼料を開発し、広食性蚕の全齢人工飼料育を実施したところ、その飼育成績並びに繰糸成績は1〜4齢人工飼料・5齢桑葉育に比較してかなり劣っており、5齢用飼料についてはさらに改良する必要のあることが分かった。

8.これらの結果から、広食性蚕の利用により従来の蚕品種では困難であった安価な飼料素材の導入が可能となり、蚕の栄養要求に基づいた飼料組成を線形計画法により合理的に設計することで、人工飼料の著しいコスト低減が可能となり、実用的飼料が開発できるものと考察した。


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