115.低コスト人工飼料育用蚕品種「しんあさぎり」(1991)

真野保久、井原音重、中川 浩、朝岡 潔、平林 隆、村上正子、永易健一(1991)蚕の新品種−「特徴ある蚕品種(日601号×602号)×(中602号×603号)」.技術資料 第122号:17-20

1.日601号
  化性:二化性。系統:日日固定種。来歴:本種は農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所において、従来の日601号を更に改良した二化性白繭系日日固定種で、低コスト人工飼料適合性品種である。
  蟻蚕は暗褐色を呈し、蚕児の体色は赤系で斑紋は限性形質を示し、雌は形、雄は姫である。雄の姫蚕斑紋には淡い半月紋と極淡い眼状紋が痕跡的にみられるが、4齢起蚕より熟蚕まで斑紋による雌雄鑑別が容易である。蚕児の経過は日134号に比べ稚蚕期では0.51日短く、壮蚕期は0.51日長い。眠起はよく揃い飼育取扱いは容易である。人工飼料育の場合は、成長がきわめて早く、蚕児は蚕座内を活発に動き回る性質がある。起蚕時の絶食時間が長くなると蚕児の這出しや蚕作の低下を起こすので、餉食は早めに行い十分飽食させることが大切である。
  繭は白色の浅縊俵形で、ちぢらは普通である。越年卵の卵色は藤鼠である。
  本種と日602号を交配する場合、両品種の取扱いがほぼ等しいときは、本種の催青着手を約2日早くすればよい。蚕種の人工孵化は即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

2.日602号
  化性:二化性。系統:日日固定種。来歴:本種は農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所において、育成中の二化性白繭系日日固定種から系統分離して育成した、低コスト人工飼料適合性品種である。
  蟻蚕は暗褐色を呈し、蚕児の体色は淡赤系で斑紋は形である。蚕児の経過は日134号に比べ稚蚕期では0.51日短く、壮蚕期もやや短い。眠起はよく揃い飼育取扱いは容易である。人工飼料育の場合は、起蚕時の絶食時間が長くなるとその後の経過が遅延するので、餉食は早めに行い十分飽食させることが大切である。繭は白色の浅縊俵形で、ちぢらは普通である。越年卵の卵色は藤鼠である。
  本種と日601号を交配する場合、両品種の取扱いがほぼ等しいときは、本種の催青着手を約2日遅くすればよい。蚕種の人工孵化は即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

3.日601号×日602号
  化性:二化性。系統:日日交雑原種。来歴:本種は日601号と602号の交雑原種であって、中602号と中603号との交雑原種を交配し、四元交雑種として低コスト人工飼料育用に通年供する。
  蟻蚕は暗褐色を呈し、蚕児の体色は淡赤系で斑紋は形である。蚕児の経過は日134号に比べ稚蚕期では1.52日短く、壮蚕期も短めである。眠起はよく揃い、飼育取扱いは容易である。人工飼料育の場合は、摂食性が優れ蚕児は活発で成長も極めて早い。このため、起蚕時の絶食時間が長くなると蚕作の低下を起こすので、餉食は早めに行い十分飽食させることが大切である。繭は白色の浅縊俵形で、ちぢらは普通である。越年卵の卵色は藤鼠である。
  本種と中602号と中603号との交雑原種を交配する場合、両交雑原種の取扱いがほぼ等しいときは、本種の催青着手を約1日早くすればよい。
  蚕種の人工孵化は即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

4.中602号
  化性:二化性。系統:中中固定種。来歴:本種は農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所において、育成した二化性白繭系中中固定種で、低コスト人工飼料適合性品種である。
  蟻蚕は黒褐色を呈し、蚕児の体色は青系で斑紋は眠性形質を示し、雌は形、雄は姫であって、4齢起蚕より熟蚕まで斑紋による雌雄鑑別が容易である。蚕児の経過は支135号と比べ稚蚕期はほぼ同じか長めで、壮蚕期はやや短い。虫質は強健で、眠起はよく揃い飼育取扱いは容易である。人工飼料育の場合は成長が早いので、眠起の取扱いには注意が必要で、餉食は早めに行い十分飽食させることが大切である。繭は白色の楕円形で、ちぢらは普通である。越年卵の卵色は生壁である。
  本種と中603号を交配する場合、両品種の取扱いがほぼ等しいときは、本種の催青着手を同時にすればよい。蚕種の人工孵化は即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浅漬時間が適当である。

5.中603号
  化性:二化性。系統:中中固定種。来歴:本種は農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所において、育成した二化性白繭系中中固定種で、低コスト人工飼料適合性品種である。
  蟻蚕は黒褐色を呈し、蚕児の体色は青系で斑紋は限性形質を示し、雌は形、雄は姫であって、4齢起蚕より熟蚕まで斑紋による雌雄鑑別が容易である。蚕児の経過は支135号に比べ稚蚕期はほぼ同じかやや長めで、壮蚕期はやや短めである。虫質は強健で、眠起はよく揃い飼育取扱いは容易である。人工飼料育の場合は成長が早いので、眠起の取扱いには注意が必要で、餉食は早めに行い十分飽食させることが大切である。繭は白色の楕円形で、ちぢらは普通である。越年卵の卵色は生壁である。
  本種と中602号を交配する場合、両品種の取扱いがほぼ等しいときは、本種の催青着手を同時にすればよい。蚕種の人工孵化は即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

6.中602号×中603号
  化性:二化性。系統:中中交雑原種。来歴:本種は中602号と中603号の交雑原種であって、日601号と日602号との交雑原種を交配し、四元交雑種として低コスト人工飼料育用に通年供する。
  蟻蚕は黒褐色を呈し、蚕児の体色は青系で斑紋は限性形質を示し、雌は形、雄は姫であって、4齢起蚕より熟蚕まで斑紋による雌雄鑑別が容易である。蚕児の経過は支135号に比べ稚蚕期では約0.51日短く、壮蚕期も短めである。眠起はよく揃い、飼育取扱いは容易である。人工飼料育の場合は、摂食性が優れ蚕児は活発で成長も極めて早い。このため、起蚕時の絶食時間が長くならないよう餉食は早めに行い十分飽食させることが大切である。繭は白色の楕円形で、ちぢらは普通である。越年卵の卵色は生壁である。
  本種と日601号と日602号との交雑原種を交配する場合、両交雑原種の取扱いがほぼ等しいときは、本種の催青着手を約1日遅くすればよい。蚕種の人工孵化は即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

7.(日601号×日602号)×(中602号×中603号)(愛称:しんあさぎり)(この四元交雑種を601・×602・3と略称する)
  化性:二化性。系統:日中交雑種。適用蚕期:春蚕および夏秋蚕期
  本種は日中四元交雑二化性の白繭種で、低コスト人工飼料育に適合する特徴のある蚕品種である。
  蚕児の体色は青系であるが淡赤系を混ずることかあり、斑紋は形に姫を混ずる。蚕児の経過は日601号×中601号に比べ、14齢では、約0.51日長く、5齢はほぼ同じか0.5日前後長い。虫質は強健で、眠起はよく揃い、飼育取扱いは容易である。本種は通常の人工飼料はもちろん低コスト人工飼料にもよく適合し、蚕児は活発で成長が早い。日601号×中601号ほどではないが、起蚕時の絶食時間が長くなると蚕児の這い出しや蚕作の低下を起こす場合があるので、餉食は早めに行い十分飽食させることが大切で、眠起の取扱いさえ注意すれば、きわめて飼育し易い品種である。繭は白色の長楕円形に浅縊俵形を混じ、ちぢらは普通である。また、繭形は やや小振りであるが繭層はよく締まり、各種量的形質も日601号×中601号とほぼ同じであるかやや優る。繭糸長は1200メートル内外、繭糸繊度は3.2デニール内外である。


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