116.桑の新品種「みつみなみ」(桑農林12号)(1991)

岩田 益、樋田仁蔵、山本 賢(1991)桑の新品種「みつみなみ」(桑農林12号).技術資料 第121号:1-49-14

1.条桑育の普及に伴い、ロソウ系を中心とした葉の大きい品種に代わり中型葉の「一ノ瀬」が関東地方から導入され、栽培されてきた。しかし、西南暖地での「一ノ瀬」は風雨により倒伏しやすく、また縮葉細菌病にも罹病性がある。そこで、これらの欠点を改良した暖地向き桑品種「みなみさかり」および「はやてさかり」を育成し、西南暖地をはじめ東日本まで栽培されている。

2.一方、近年普及拡大してきている密植栽培は早期多収はもちろん機械収穫による低コスト省力化を目標としている。しかしながら、現在のところは普通栽培形式で育成された品種が栽培されている。このため、必ずしも密植栽培に適している品種とは言えず、枝が直立性で活発に生長し、機械収穫のために条径が細い特性をもつ良質・多収品種の育成が強く望まれてきた。
 そこで、さらに良質・多収で耐倒伏性、耐病性(縮葉細菌病、萎縮病)および再発芽性に優れ、西南暖地の密植栽培に適応する優良品種の育成を目標とした。

3.本品種は、昭和49年に桑萎縮病抵抗性品種「大島桑」のS1を雌親に、蚕系試験場九州支場栽桑研究室において暖地向きに育成し、葉の硬化が遅い「みなみさかり」(桑農林4号)を継親に用いて交配を行い、昭和5053年に個体選抜試験を実施して系統番号「九74-69」が付けられた。その後、昭和5458年に系統選抜試験を行った結果、本系統は優良な成績を収めた。

4.そこで、昭和5761年に鳥取県、徳島県および鹿児島県の各試験地で桑萎縮病抵抗性検定試験を実施するとともに、昭和61〜平成元年に宮崎県の試験地において系統適応性(密植)検定試験に供試し、栽培試験及び蚕の飼育試験が行われた。その結果、密植栽培に適した良質・多収性桑であることが認められ、平成2年6月22日「桑農林12号」として登録され、「みつみなみ」と命名された。

5.本品種はロソウ系に属する2倍体で、暖地の密植栽培に適し、耐病性・良品質多収性であることから「みつみなみ」と命名された。特性の概要は次の通りである。@葉は春秋とも全縁中型で濃緑色を呈し、葉面は平滑で光沢がある、A春の発芽は「しんいちのせ」よりやや早く、新梢の発育は良好である、B中間伐採後の再発芽は極めて良好で、晩秋期の葉の硬化は遅い、C枝条長は「しんいちのせ」よりやや短いが、株内枝条長は斉一であり、枝条数は多い。また、節間長は「しんいちのせ」より短い、D条径は「しんいちのせ」に比べて細い、E収量は「しんいちのせ」に比べて多く、特に夏秋期に多収性である、F縮葉細菌病抵抗性は高く、萎縮病および裏うどんこ病には「しんいちのせ」並の中間性である。また、故障株割合は低い、G蚕飼育成績による飼料価値は「しんいちのせ」と同程度に良好である、H接木の活着並びに挿木発根性は良好である。

6.本品種の適応地域は四国、九州の平坦地および中山間地帯の密植栽培に適し、春秋兼用、夏秋専用として、春、夏秋の壮蚕用に適する。桑萎縮病抵抗性は中間性であるので、桑萎縮病激発地への導入は避け、計画的に防除する必要がある。また、安定多収並びに樹勢維持のため、株元伐採での収穫は年1回とする。

※岩田 益、樋田仁蔵、山本 賢(1992)桑の新品種「みつみなみ」の育成.九州農業試験場報告 27(2)183-205


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